適応障害で仕事できない?休職の判断基準から回復まで解説
- 適応障害とは?
- 適応障害は珍しい病気ではない
- 適応障害とうつ病との違い
- 適応障害で休職や環境調整が必要とされる理由
- ストレス源から離れることが回復につながる場合がある
- 無理に出社し続けると悪化することもある
- 適応障害で「仕事できない」と感じる困りごと
- 身体が動かない・通勤電車で動悸がする
- ケアレスミスが増加する
- 優先順位がつけられない
- 上司・同僚と話すのが怖い
- 帰宅しても仕事のことが頭から離れない
- 適応障害を引き起こす要因
- 慢性的な長時間労働・慣れない業務の負担
- 上司のパワハラ・同僚との孤立・ハラスメント
- 突然の異動・降格・リストラなど
- 育児・介護との両立困難・引越しや結婚などライフイベント
- 失敗体験の積み重ね・昇進できない焦り
- 今すぐ休職すべき?セルフチェック
- 今日どうしても仕事に行けないときの対応
- まずは会社へ欠勤の連絡をする
- 電話が難しい場合はメール・チャットで伝える
- 無断欠勤はできるだけ避ける
- 利用できる支援制度
- 傷病手当金
- 自立支援医療制度(精神通院医療)
- 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
- 加藤 美遥 (社会福祉士/精神保健福祉士/介護福祉士)
- 回復後の選択肢:復職・転職・退職・就労移行支援
- 復職を選ぶ場合
- 転職を選ぶ場合
- 退職を選ぶ場合
- 就労移行支援を選ぶ場合
- 就労移行支援manaby(マナビー)の特徴と支援内容
- よくある質問
- 適応障害でも傷病手当金はもらえますか?
- 休職期間はどのくらいが目安ですか?
- 適応障害でも復職できますか?
- 障害者手帳は取得すべきですか?メリット・デメリットは?
- 適応障害で退職した場合、失業給付はすぐにもらえますか?
- 治療はどのくらいかかりますか?薬を一生飲み続けないといけませんか?
- 適応障害で仕事を続けるのが難しいと感じたら
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「朝、布団から起き上がれない」「通勤電車に乗ると動悸がする」
そんな状態が続いていると、「自分はもう仕事ができないのではないか」と不安になるかもしれません。
適応障害は、特定のストレスが原因で心身に不調が起こる病気です。本人の気の持ちようや甘えではなく、休養をとったり、ストレスの原因から距離を置いたりすることで回復に向かうことがあります。
この記事では、適応障害で仕事ができないと感じたときの判断基準、休職までの具体的な流れ、利用できる公的な支援制度、そして回復後の選択肢までを分かりやすく解説します。
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適応障害とは?
- 適応障害は特定のストレスが原因で心身に不調が現れる精神疾患で、医学的に認められた病気です。
- 患者数は近年増加傾向にあり、決して珍しい病気ではありません。
- うつ病と症状が似ていますが、ストレスの原因から離れると改善しやすい点が大きな違いです。
適応障害とは、仕事や人間関係、生活環境の変化など、はっきりとしたストレスの原因があり、それにうまく対応できずに心身の不調が現れる状態を指します。
症状としては、憂うつな気分、不安感、涙もろさといった情緒面の変化のほか、頭痛・不眠・食欲不振などの身体症状が出ることもあります。
特徴的なのは、ストレスの原因がはっきりしている点であり、そのため原因から離れると症状が和らぐ場合が多いとされています。
このような状態から、「気の持ちようではないか」「甘えなのではないか」と感じてしまう方も少なくありません。
しかし、適応障害は医学的に認められた精神疾患であり、本人の意志や根性の問題ではありません。
精神医学の診断基準であるDSM-5にも分類されており、強いストレスによって心身のバランスが崩れた結果として起こるものです。そのため、治療や休養、環境調整が必要になる場合があります。
適応障害は珍しい病気ではない
厚生労働省の患者調査によると、適応障害が含まれる「重度ストレスへの反応及び適応障害」の総患者数は近年増加傾向にあります。
| 調査年 | 総患者数(F43) |
|---|---|
| 2008年(平成20年) | 約4.1万人 |
| 2017年(平成29年) | 約10.1万人 |
| 2023年(令和5年) | 約17万人 |
※ 適応障害のほか、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や急性ストレス反応なども含まれます。
このように、強いストレスによる精神的な不調を抱える方は増加傾向にあり、適応障害も決して珍しいものではありません。
参考:厚生労働省「患者調査 総患者数、傷病基本分類別(e-Stat 政府統計の総合窓口)」
適応障害とうつ病との違い
適応障害とうつ病は症状が似ているため混同されやすいですが、原因や症状の現れ方には違いがあります。まずは代表的な違いを整理してみましょう。
| 項目 | 適応障害 | うつ病 |
|---|---|---|
| ストレス原因 | 明確(特定の出来事・状況) | 必ずしも明確でない |
| 原因から離れたとき | 症状が和らぎやすい | 改善しにくいことがある |
| 気分の変化 | ストレス状況で強まる | 一日中・継続的に続く |
| 回復の見通し | 環境調整で改善しやすい | 治療に時間がかかることがある |
適応障害とうつ病にはこのような違いがあります。ただし、実際には症状だけで明確に区別することが難しい場合も少なくありません。
また、適応障害を放置してストレスにさらされる状況が長く続くと、うつ病など別の精神疾患につながることもあります。
そのため、「適応障害だから大丈夫」「そのうち治るだろう」と自己判断せず、不調が続く場合は早めに医療機関へ相談することが重要です。
適応障害で休職や環境調整が必要とされる理由
- 適応障害ではストレスの原因から離れることが、回復への重要な手段になります。
- 無理に出社し続けることで症状が悪化し、うつ病など別の疾患に移行するリスクもあります。
- 環境を整えることは、症状を改善させるための選択肢の一つです。
適応障害で不調を抱えているとき、医師から休職や異動などの環境調整を勧められることがあります。「休むと職場に迷惑をかけてしまう」とためらう方も多いですが、適応障害において環境を整えることは、回復に向けて重要な対応の一つです。
ここでは、なぜ休養や環境の調整が必要とされるのか、具体的な理由を解説します。
ストレス源から離れることが回復につながる場合がある
適応障害の大きな特徴は、原因となるストレスから離れると症状が和らぎやすいことです。ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているため、原因から距離を置くことで症状が改善に向かうことも少なくありません。
そのため、休職や環境調整が回復のための有効な手段になります。
無理に出社し続けると悪化することもある
一方で、ストレスの原因から離れられない状況が続くと、症状が長引いたり悪化したりすることがあります。
無理に出社を続けた結果、適応障害がうつ病など別の精神疾患に移行してしまうケースもあります。
そうなると回復までにより長い時間がかかることもあるため、つらい状態が続いているなら早めに専門家へ相談することが大切です。
適応障害で「仕事できない」と感じる困りごと

- 通勤中の動悸・息苦しさ、ケアレスミスの増加、優先順位がつけられないといった困りごとは、適応障害の症状の一つです。
- 「気合いが足りないだけ」と自分を責める必要はなく、これらの変化はストレスによる心身の反応です。
- 休めない状態が続くと症状がさらに悪化することがあるため、早めに対策を取ることが大切です。
適応障害になると、これまで当たり前にこなせていた業務が急に難しくなることがあります。「気合いが足りないだけではないか」「もっと頑張らなければ」と自分を責めてしまう方もいますが、こうした変化は適応障害によって起こる症状の一つです。
ここでは、適応障害の方によくみられる仕事上の困りごとを5つ紹介します。
身体が動かない・通勤電車で動悸がする
適応障害では、出勤に対して強い負担を感じることがあります。特に、職場へ向かう途中に動悸や息苦しさ、吐き気などの身体症状が現れ、通勤そのものがつらくなるケースも少なくありません。
ケアレスミスが増加する
これまで問題なくこなせていた作業で、ミスが目立つようになることがあります。
こうしたケアレスミスの増加も、適応障害のサインの一つです。
適応障害では、強いストレスによって集中力や注意力が低下します。脳が常に緊張状態にあるため、目の前の作業に意識を向け続けることが難しくなります。ミスが増えると「自分は仕事ができなくなった」とさらに落ち込み、それがまたミスを呼ぶという悪循環に陥りやすくなります。
優先順位がつけられない
仕事の段取りがうまく立てられなくなるのも、よくある困りごとです。
ストレスによって思考の整理がうまくいかなくなると、物事を順序立てて考える力が一時的に低下します。やるべきことが頭の中で渋滞してしまい、結果として何も手につかなくなることもあります。
上司・同僚と話すのが怖い
職場での対人関係に、強い恐怖や緊張を感じることもあります。
特に、人間関係そのものがストレス源になっている場合、職場の人と接すること自体が大きな負担になります。「嫌われているのでは」と過剰に気にしてしまったり、相手の何気ない一言を深刻に受け止めてしまったりすることもあります。
帰宅しても仕事のことが頭から離れない
仕事のオン・オフが切り替えられなくなるのも、典型的な困りごとです。
本来、休息は心身を回復させる時間です。けれども、ストレスが強いと緊張状態が続き、休んでいても気が休まりません。この状態が続くと、睡眠不足や疲労の蓄積からさらに症状が悪化することがあります。
適応障害を引き起こす要因
- 適応障害の要因は、長時間労働・ハラスメント・突然の環境変化・ライフイベントなど多岐にわたります。
- 育児・介護・引越しなど仕事以外の要因が引き金になることもあります。
- 原因を知るためには、自分の状態を客観的に理解することが大切です。
適応障害は、特定のストレスが引き金となって発症します。しかし、「何が原因なのかわからない」「気づいたら限界だった」と感じることも少なくありません。
原因を知ることは自分の状態を客観的に理解し、回復に向けた環境調整を考えるうえで役立ちます。ここでは、適応障害を引き起こしやすい代表的な要因を5つ紹介します。
慢性的な長時間労働・慣れない業務の負担
長時間労働が続くと、心身を回復させる時間を十分に確保できず、疲労やストレスが蓄積していきます。残業や休日出勤が常態化すると、睡眠不足のまま働き続けることになり、心の余裕も失われがちです。
また、本来の専門性や得意分野とかけ離れた業務を任され続けることも、大きな負担になります。慣れない仕事に常に緊張を強いられ、「うまくできない」という感覚が積み重なると、自信の低下や強い不安につながります。
上司のパワハラ・同僚との孤立・ハラスメント
職場の人間関係は、適応障害の大きな要因のひとつです。上司からの威圧的な言動や過度な叱責、同僚から孤立させられる状況、いわゆるパワーハラスメントは、心に深い傷を与えます。
日々ハラスメントにさらされる環境では、出勤そのものが強いストレスとなり、不調につながることがあります。
突然の異動・降格・リストラなど
予期しない異動や昇進、降格、リストラといった、仕事上の大きな変化も適応障害の引き金になります。新しい部署での人間関係や業務をゼロから構築する負担、慣れた環境を失う喪失感は、想像以上に大きなストレスです。
一見すると前向きな変化に見える昇進や異動であっても、責任の増加や環境の変化が大きな負担となり、不調につながることがあります。
育児・介護との両立困難・引越しや結婚などライフイベント
適応障害の要因は、職場の中だけにあるとは限りません。育児や介護と仕事の両立、引越し、結婚、出産といったライフイベントも、大きな環境変化として心身に負担をかけます。
たとえ喜ばしい出来事であっても、生活リズムや役割が大きく変わることは、それ自体がストレスになります。仕事と家庭の両方で負担が重なると、休む場所がなくなり、心身が限界を迎えやすくなります。プライベートの変化が不調の背景にあることも、決して珍しくありません。
失敗体験の積み重ね・昇進できない焦り
一度の大きな出来事だけでなく、日々の小さな失敗体験の積み重ねも、適応障害の要因になります。思うように成果が出ない、評価されない、同期は昇進したのに自分はできていないといった焦りは、少しずつ自己肯定感を削っていきます。
「もっと頑張らなければ」と自分を追い込み続けた結果、ある日突然心身が動かなくなることもあります。一つひとつは小さな出来事でも、積み重なることで大きなストレスになることがあります。
今すぐ休職すべき?セルフチェック
今のつらさが「休職を考えるほどなのか」「まだ頑張れる状態なのか」は、自分では判断しづらいものです。
適応障害では、心身の不調が少しずつ進行するため、自覚しないまま無理を続けてしまうことも少なくありません。
まずは現在の状態を振り返ってみましょう。以下は、休養や医療機関への相談を検討する目安となるセルフチェックリストです。あくまで参考であり、診断を行うものではありませんが、自分の状態を整理するきっかけとしてご活用ください。
※このチェックリストは加藤美遥氏(社会福祉士/精神保健福祉士/介護福祉士)による監修済みです。
最近2週間の状態を振り返るセルフチェック
当てはまるものにチェックを入れてください(複数選択可)
項目を選ぶと、状態を振り返るための目安が表示されます。
厚生労働省「まもろうよ こころ」相談窓口一覧 →今日どうしても仕事に行けないときの対応
- 仕事に行けないときはまず会社への欠勤連絡を。電話が難しければメール・チャットでも構いません。
- 詳しい症状を説明する必要はなく、「体調不良のため欠勤」と簡潔に伝えるだけで大丈夫です。
- 自分で連絡できないときは家族に代わりに連絡してもらうことも一つの方法です。
「今日はどうしても会社に行けない」「明日の出勤を考えるだけでつらい」と感じている方もいるかもしれません。
そのようなときは、無理に出社することだけが正解ではありません。まずは現在の体調を優先し、必要な連絡を行うことが大切です。
まずは会社へ欠勤の連絡をする
体調が悪く出社が難しいときは、始業前に会社へ欠勤の連絡を入れます。連絡先は会社によって異なりますが、直属の上司や会社で定められた連絡先へ伝えるのが一般的です。就業規則で欠勤時の連絡方法が定められている場合もあるため、確認しておくと安心です。
連絡では、細かい症状を詳しく説明する必要はありません。伝える内容の例として、欠勤すること、簡単な理由(体調不良)、緊急の業務の有無の3点を押さえておくと安心です。
電話が難しい場合はメール・チャットで伝える
「電話で話すこと自体がつらい」という状態のときもあります。体調が悪いと、電話で状況を説明することに強い負担を感じることも珍しくありません。その場合は、メールやビジネスチャットで連絡する方法もあります。
会社ごとに定められた連絡方法に従うことが基本ですが、体調的に電話が難しい場合は、まずメールやチャットで状況を伝え、その後の対応について確認しましょう。伝える内容は、電話の場合と同様で問題ありません。
無断欠勤はできるだけ避ける
体調がつらいと連絡する気力もなくなりがちですが、可能であれば会社へ一報を入れておくと安心です。
無断欠勤が続くと、会社が状況を把握できず心配するだけでなく、就業規則上の不利益につながる可能性もあります。一報を入れておくことで、会社も状況を把握しやすくなります。
自分で連絡することが難しい場合は、家族などに代わりに連絡してもらう方法もあります。まずは会社へ状況を伝えることを優先しましょう。
利用できる支援制度
- 傷病手当金は休職前給与の約2/3が最長1年6か月支給される制度で、適応障害でも要件を満たせば利用できます。
- 自立支援医療制度(精神通院医療)を使うと、通院医療費の自己負担が原則3割から1割に軽減されます。
- 障害者手帳は適応障害のみでの取得が難しいケースもありますが、症状が長期間続く場合は主治医に相談しましょう。
休職すると収入や医療費への不安が大きくなります。しかし、適応障害で休職している方が利用できる公的な支援制度もあります。状況に応じて活用することで経済的な負担を軽減しながら治療や回復に専念しやすくなります。
ここでは、適応障害の方が利用できる代表的な制度を3つ紹介します。
傷病手当金
傷病手当金は、病気やけがによって働けなくなり、給与が支払われない期間の生活を支えるための健康保険制度です。適応障害による休職でも、一定の要件を満たせば利用できます。健康保険の被保険者であれば、働いていた期間に関わらず、受給の対象となります。
支給額は休職前の給与のおおよそ3分の2で、支給開始日から通算して最長1年6か月受給できます。収入面の不安を抑えながら休養できるため、安心して治療や回復に取り組みやすくなります。
受給には、連続する3日間を含めて4日以上仕事を休んでいることなどの要件があります。
申請には医師の意見書や勤務先の証明が必要になるため、休職手続きとあわせて準備を進めるとスムーズです。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金」
自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度(精神通院医療)は、精神疾患の治療で継続的な通院が必要な方の医療費負担を軽減する制度です。適応障害で通院や服薬を続ける場合にも利用できる可能性があります。通院や服薬の他に、デイケアや精神科訪問看護の利用が必要になる場合にも自立支援医療の対象になります。
通常、医療費の自己負担は3割ですが、この制度を利用すると原則1割に軽減されます。また、所得に応じて月ごとの自己負担上限額も設けられているため、治療が長引いた場合でも医療費の負担を抑えながら通院を続けやすくなります。
手続きはお住まいの市区町村で行います。医師の診断書や意見書が必要になるため、主治医に相談しながら準備を進めましょう。
参考:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」
障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患によって日常生活や社会生活に一定の制約があることを認定する手帳です。
ただし、適応障害のみを理由として手帳の対象になるケースは多くないと考えられています。適応障害は、ストレス要因から離れることで症状が改善することも多く、一般的には比較的短期間での回復が期待される疾患とされています。
また、精神障害者保健福祉手帳の申請には原則として精神疾患の初診日から6か月以上経過していることが必要です。そのため、発症から間もない適応障害では申請要件を満たさない場合もあります。
一方で、症状が長期間続いている場合や、うつ病などほかの精神疾患を併発している場合には状況に応じて対象となることがあります。
取得の可否は症状の程度や生活への影響などを踏まえて総合的に判断されるため、気になる場合は主治医やお住まいの自治体へ相談してみましょう。
参考:国立精神・神経医療研究センター「障害者手帳・障害年金(こころの情報サイト)」
回復後の選択肢:復職・転職・退職・就労移行支援
- 復職・転職・退職・就労移行支援など、選択肢は一つではありません。
- 復職を選ぶ場合は、原因となった要因が改善されているかの確認が大切です。
- すぐに復職する自信がない場合は、就労移行支援という選択肢もあります。
体調が回復してくると、「元の職場に戻るべきか」「転職した方がよいのか」「しばらく療養を続けるべきか」など、今後の働き方について悩む方も少なくありません。
回復後の選択肢は一つではなく、それぞれにメリットと注意点があります。自分の体調や希望に合った選択をすることが大切です。
復職を選ぶ場合
復職は、休職していた元の職場に戻る選択肢です。慣れた環境や人間関係の中で働ける安心感があり、収入面でも安定を保ちやすいという利点があります。
ただし、適応障害の原因が職場の環境そのものにあった場合、同じ環境に戻ると再発のリスクが残ります。復職を選ぶ際は、原因となった要因が改善されているかを確認することが大切です。部署異動や業務内容の調整、勤務時間の配慮など、再発を防ぐための環境調整を会社と相談できると安心です。
主治医や産業医の意見も参考にしながら、無理のない形で復帰のタイミングや働き方を検討していきましょう。
転職を選ぶ場合
転職は、新しい環境で再スタートを切る選択肢です。今の職場の環境がストレスの原因になっている場合、環境を変えることで症状が改善することもあります。
転職を考える際には、障害や疾患を開示して働く「オープン就労」と、開示せずに働く「クローズ就労」の違いも知っておくことが大切です。
オープン就労は、障害や疾患を会社に開示して働く方法で、症状への配慮や勤務時間の調整を受けやすい一方、求人の幅や給与水準に制約が出ることもあります。障害者雇用枠の利用には、原則として障害者手帳が必要です。クローズ就労は、疾患を開示せずに一般の求人で働く方法で、選択肢は広い反面、配慮を受けにくい面があります。
| 項目 | オープン就労(障害者雇用枠) | クローズ就労(一般雇用) |
|---|---|---|
| 疾患の開示 | 開示する | 開示しない |
| 配慮の受けやすさ | 受けやすい | 受けにくい |
| 求人の幅 | 限定される場合がある | 広い |
| 手帳の要否 | 原則必要 | 不要 |
どちらが合うかは、症状の安定度や働き方の希望によって変わります。両方を視野に入れて検討すると、自分に合う形を見つけやすくなります。
退職を選ぶ場合
退職は、今の職場をいったん離れる選択肢です。療養に専念したい場合や、職場との関係を続けることが難しい場合に選ばれます。
退職する際は、退職届の提出や、健康保険・年金の切り替え、離職票の受け取りといった手続きが必要です。また、退職後は雇用保険の失業給付(基本手当)を受けられる場合があります。体調不良を理由とした退職では、状況によって雇用保険の給付で配慮を受けられる場合があります。
参考:ハローワークインターネットサービス(厚生労働省)「基本手当について」
就労移行支援を選ぶ場合
「すぐに復職する自信がない」「転職したいけれど、まずは体調や生活リズムを整えたい」と感じる方もいるかもしれません。そのような場合の選択肢の一つが就労移行支援です。
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害のある方が、就職に向けた訓練やサポートを受けられる福祉サービスです。障害者総合支援法に基づく公的な制度です。
利用することで、ビジネススキルの訓練や職場体験、応募書類の作成支援、面接練習などを受けられます。また、就職後も職場に定着できるようサポートを受けることが可能です。
利用料は世帯所得に応じて決まり、多くの場合は無料または低額で利用できます。
就労移行支援manaby(マナビー)の特徴と支援内容
就労移行支援manaby(マナビー)は、在宅と通所を組み合わせながら、自分のペースで就職に向けた訓練に取り組める就労移行支援事業所です。一人ひとりのペースに合わせた支援を重視している点が特徴です。
主な支援内容には、次のようなものがあります。
- eラーニングを活用したスキル習得
- 在宅(※)・通所から選べる柔軟な訓練スタイル
- 応募書類の作成や面接対策などの就職活動サポート
- 就職後の定着支援
※在宅訓練は、自治体への申請のうえ認められた場合に利用できます。
よくある質問
適応障害での休職や、その後の選択について、よく寄せられる疑問をまとめました。
適応障害でも傷病手当金はもらえますか?
要件を満たせば、適応障害でも傷病手当金を受け取れます。
傷病手当金は、病名で対象が決まるものではなく、病気やけがで働けない状態かどうかで判断されます。適応障害で医師が「療養が必要」と認め、連続する3日間を含む4日以上仕事を休んでいるなどの要件を満たせば、対象になります。
健康保険に加入していること(国民健康保険は原則対象外)も条件の一つです。申請には医師の意見や勤務先の証明が必要なため、休職手続きと合わせて準備すると進めやすくなります。
休職期間はどのくらいが目安ですか?
休職期間に決まった長さはなく、状態によって幅があります。
適応障害の休職期間は、数週間で復帰する人もいれば、数か月かかる人もいて、個人差が大きいものです。診断書には「1か月」「3か月」といった療養期間の目安が記載され、状態を見ながら延長や短縮が検討されます。大切なのは、期間を区切って焦ることではなく、回復の段階に合わせて無理なく進めることです。会社の就業規則で休職できる上限期間が定められていることもあるため、人事担当者に確認しておくと安心です。
適応障害でも復職できますか?
適応障害では、十分な休養や治療によって症状が改善し、復職を目指すことは可能です。
ただし、適応障害の原因が職場環境そのものにある場合は、同じ環境へ戻ることで再び不調につながる可能性もあります。復職を検討する際は、主治医や会社と相談しながら、業務内容や勤務時間の調整が可能か確認することが大切です。
障害者手帳は取得すべきですか?メリット・デメリットは?
取得は任意です。必要な支援や働き方に応じて検討することをおすすめします。
メリットとしては、税制上の優遇や公共料金・交通機関の割引、障害者雇用枠での就職を目指しやすくなることなどがあります。
一方で、申請には診断書の取得費用がかかり、精神障害者保健福祉手帳は有効期限ごとに更新手続きも必要です。
適応障害で退職した場合、失業給付はすぐにもらえますか?
療養中ですぐに働けない間は、基本的に失業給付(基本手当)は受け取れません。
失業給付は「働ける状態で、求職活動をしていること」が受給の前提だからです。適応障害の治療に専念していて今は働けないという段階では、この条件を満たさないため支給されません。
一方で、知っておきたい制度もあります。
- 病気などで30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請できる
療養中はいったん受給を保留し、回復して働ける状態になってから受け取ることができます。 - 「特定理由離職者」に認められる場合がある
病気や体調不良など正当な理由で退職した場合は、特定理由離職者として扱われることがあります。その場合、通常の自己都合退職よりも有利な条件で失業給付を受けられる可能性があります。
参考:厚生労働省「雇用保険制度の概要」/厚生労働省「離職された皆様へ」
治療はどのくらいかかりますか?薬を一生飲み続けないといけませんか?
治療期間は状態によって異なりますが、数週間から数か月以上かかる場合もあり、個人差があります。
適応障害は、ストレスの原因から離れ、適切な休養をとることで改善が見込める病気です。薬は、不安や不眠などの症状をやわらげるために一時的に使われることが多く、回復に伴って減らしたり中止したりすることもあります。
薬の調整は自己判断で行わず、必ず主治医と相談しながら進めることが大切です。
適応障害で仕事を続けるのが難しいと感じたら
適応障害は、意志や気力の問題ではなく、ストレスによって心身のバランスが崩れている状態です。仕事を続けることがつらいと感じているときは、すでに心と体が休息を必要としているサインかもしれません。
無理を続けるほど回復に時間がかかることもあるため、「休む」「環境を調整する」といった選択は、回復に向けた大切な一歩になります。いきなり大きな決断をする必要はありません。
まずは、今できそうなことから一つだけでも取り組んでみましょう。
- 主治医や心療内科に相談する
- 体調不良として会社へ一報を入れる
- 今のつらさや不安をメモに書き出してみる
- 家族や信頼できる人に相談する
- 休職制度や利用できる支援制度について調べる
適応障害で仕事ができないと感じたときは、一人で抱え込まず、まずは医療機関へ相談することが大切です。休職や復職、転職、就労移行支援の利用など、選択肢は一つではありません。
今の体調や状況に合った方法を選びながら、少しずつ回復と今後の働き方を考えていきましょう。
加藤 美遥 (社会福祉士/精神保健福祉士/介護福祉士)
適応障害で手帳の取得は難しいです。
適応障害や急性一過性精神病などは症状が一時的であり回復が見込まれる障害に分類されます。長期間の治療が必要となる場合は、他の疾患への鑑別が必要となります。
精神保健福祉手帳は一時的ではなく、長期的に日常生活や社会生活に制限や支障をきたす場合に対象となります。そのため初診時から申請が可能なのではなく、初診から6ヶ月以上経過していていることが必要です。