聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方に向いている仕事は?働き方の工夫を紹介
- 聴覚情報処理障害の方が仕事で感じる困りごと
- 口頭指示が理解しづらく、何度も聞き返してしまう
- 電話対応や会議についていけない
- 聴覚情報処理障害の方が働きやすい環境・働き方
- テキストやチャットでのやり取りが中心の環境
- 騒音が少なく集中しやすい職場
- 一人で完結しやすい業務
- 聴覚情報処理障害の方に向いている仕事
- テキストやチャットでのやり取りが中心になりやすい仕事
- 騒音が少なく、集中しやすい環境を選びやすい仕事
- 一人で完結しやすい業務が多い仕事
- 職種別に見る向いている理由と確認したいポイント
- 聴覚情報処理障害の方が負担を感じやすい仕事
- 電話対応や対面コミュニケーションが中心の仕事
- マルチタスクや即時対応が求められる仕事
- 【注意】向いていない仕事の中でも、例外はある
- 聴覚情報処理障害の方におすすめの仕事の工夫
- Web会議では自動字幕・文字起こし機能を使う
- 口頭指示は必ずメモを取り確認するようにする
- 電話対応を減らし、メール・チャットでの対応を行う
- 音の刺激を減らす
- 聴覚情報処理障害の方が職場に配慮を伝える方法と合理的配慮の具体例
- 伝える前に整理したいこと
- 面接・入社後の伝え方の例
- 合理的配慮の考え方と相談先
- 聴覚情報処理障害の仕事を選ぶ時のステップ
- ステップ1:困りごとを書き出す
- ステップ2:苦手な環境・得意な環境を整理
- ステップ3:働き方の選択肢を知る
- 求人・職場見学で確認したいこと
- 聴覚情報処理障害で障害者手帳を取得できる?
- 聴覚情報処理障害で仕事について相談できる支援先
- 就労移行支援
- 就労移行支援manaby(マナビー)について
- ハローワーク(障害者専門窓口)
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 発達障害者支援センター
- 医療機関(診断・相談)
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)とは
- 聴覚情報処理障害の仕事に関するよくある質問
- 聴覚情報処理障害があることを、職場に伝えたほうがいいですか?
- 障害者手帳の対象になりますか?
- 聴覚情報処理障害と発達障害は関係がありますか?
- 診断はどこで受けられますか?
- 在宅ワークなら安心ですか?
- 聴覚情報処理障害で仕事に悩んだ時、どこに相談すればいいですか?
- 聴覚情報処理障害の特性を知ることが、無理のない仕事選びに繋がる
- 狩野淳 (臨床心理士・公認心理師)
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「会議の内容が途中から分からなくなる」「電話対応が続くと強い疲労を感じる」「口頭指示を何度も聞き返し、自信をなくしてしまった」と感じる方は少なくありません。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)があると、こうした場面で仕事のつらさを感じやすくなります。しかし、それは能力が足りないからではなく、音情報の処理に負担がかかる特性によるものです。
大切なのは、どんな環境なら負担が軽くなるのか、どんな工夫があれば無理なく続けられるのかを知ることです。
この記事では、聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方に向いている仕事の特徴や、避けたほうがよい仕事の傾向、すぐに取り入れられる働き方の工夫を分かりやすく解説します。

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聴覚情報処理障害の方が仕事で感じる困りごと
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方は、口頭指示を整理するのに時間がかかり、聞き返しや聞き漏らしが起こりやすくなる。
- その結果、作業ミスや確認漏れが起きたり、電話や会議は理解しづらく疲れやすい。
ここでは聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方が仕事で感じる困りごとについて紹介します。
口頭指示が理解しづらく、何度も聞き返してしまう
口頭指示が理解しづらいのは、聞こえた情報を整理するのに時間がかかるためです。そのため、内容を処理している間に次の説明が始まることがあります。
すると、指示の一部を聞き逃し、全体像がつかめなくなります。その結果、作業手順や条件を正確に把握できず、不安を感じやすくなります。
作業説明が口頭だけで、途中から内容が分からなくなってしまう。
「さっき言ったよね」と言われると、それ以上確認しづらくなってしまう。
条件や注意点を聞き逃してしまい、あとで重大なミスに気づく。
引き継ぎ後に内容があいまいになり、再度聞き直す必要が出てしまう。
電話対応や会議についていけない
電話や会議で困りごとを感じるのは、音声情報だけで理解する必要があるためです。また、表情や口の動きといった視覚的な手がかりを使えず、話すスピードが速いと内容を処理する前に話題が切り替わってしまいます。
その結果、重要なポイントを把握できず、強い疲労を感じやすくなります。
電話中に要件を聞き取れず、メモが追いつかない。
会議で誰が何を言ったのか分からなくなってしまう。
話の流れについていけず、発言のタイミングを失ってしまう。
会議後に内容を理解できていないことに気づく。
聴覚情報処理障害の方が働きやすい環境・働き方
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方は、音声だけに頼らず、文字で確認できる環境のほうが理解しやすい。
- 周囲の雑音が少ない職場では、必要な情報に意識を向けやすく、疲労やストレスも軽減しやすい。
- やり取りの少ない業務や自分のペースで進めやすい仕事は、聞き取りの負担を減らし、働きやすい。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方が働きやすい環境・働き方について紹介します。
テキストやチャットでのやり取りが中心の環境
テキストやチャット中心の環境は、情報を目で確認できるため理解しやすくなり、聞き逃しや聞き間違いを防ぎ、自分のペースで内容を整理することができます。
また、あとから見返せることで不安や確認作業の負担も軽くなります。
- 業務指示をチャットやメールで共有してもらえる
- 会議後に要点をテキストでまとめてもらえる
- 口頭説明があっても、必ず文章で補足がある
- Web会議で自動字幕や文字起こしを使える
騒音が少なく集中しやすい職場
騒音が少ない職場では、音による情報の混乱が起こりにくくなり、周囲の雑音が減ることで、必要な音や情報に意識を向けやすくなります。
その結果、疲労やストレスを抑えながら仕事に集中しやすくなります。
- 人の出入りが少ない静かな作業スペースがある
- 電話の音や雑談が少ない部署
- ノイズキャンセリングやイヤーマフの使用が許可されている
- フリーアドレスでも静かな席を選べる
一人で完結しやすい業務
一人で完結しやすい業務は、コミュニケーションの負担が少なくなり、他人の指示や会話に左右されにくく、自分のリズムで作業を進めやすくなります。
そのため、聞き取りの不安を感じにくく、安定して働きやすくなります。
- データ入力やチェック作業などの定型業務
- Web制作やライティングなどの個人作業
- 軽作業やものづくりなど黙々と進められる仕事
- 在宅で完結する業務やタスク単位の仕事
聴覚情報処理障害の方に向いている仕事
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方は、テキスト中心で、騒音が少なく、一人で完結しやすい仕事ほど、聞き取りの負担を減らしやすい。
- 職種名だけで判断せず、電話の頻度や会議の進め方といった仕事の中身を確認することが大切。
- 職種ごとの向いている理由と、事前に確認したい配慮のポイントを表にまとめている。
前章で紹介した「テキストやチャットでのやり取りが中心の環境」「騒音が少なく集中しやすい職場」「一人で完結しやすい業務」といった働きやすい環境を整えやすい仕事の特徴をもとに、聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方に向いている仕事を紹介します。
テキストやチャットでのやり取りが中心になりやすい仕事
騒音が少なく、集中しやすい環境を選びやすい仕事
一人で完結しやすい業務が多い仕事
職種別に見る向いている理由と確認したいポイント
ここまで紹介した聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方に向いている仕事の中から、代表的な職種について、向いている理由と、働き始める前に確認しておきたいポイントを整理します。
| 職種 | 向いている理由 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| Webライター・校正 | 指示や修正がテキストで共有されやすく、自分のペースで読み返しながら進められる | 打ち合わせが通話中心になっていないか。修正指示をチャットやコメントで受けられるか |
| データ入力・データチェック | 業務内容が画面や書類で示され、口頭でのやり取りが少ない | 電話の取り次ぎや来客対応を兼ねていないか。席の周りの音が大きくないか |
| プログラマー・システム運用 | 仕様書やチケットなど、文章での情報が中心で、集中して作業できる時間を確保しやすい | 朝会や定例会議の頻度。Web会議で字幕機能を使えるか |
| 経理・総務などのバックオフィス | 手順が決まった定型業務が多く、書類やシステム上で進めやすい | 電話や来客対応の担当範囲。社内からの口頭での依頼が多くないか |
| Webデザイン・イラスト制作 | 画面上で成果物を確認でき、修正点を文字や画像で共有しやすい | 依頼元との打ち合わせが、対面や通話に偏っていないか |
| データ分析・研究補助 | 集中作業が中心で、雑談の少ない環境を選びやすい | 作業場の機械音の大きさ。チームでの口頭ミーティングの頻度 |
ただし、同じ職種でも、電話対応の有無や会議の進め方によって、聞き取りの負担は変わります。例えば「事務職だから大丈夫」と考えていても、電話の取り次ぎが多い職場では、負担を感じることがあります。
求人や職場見学で確認したいポイントは、「求人・職場見学で確認したいこと」で紹介しています。
聴覚情報処理障害の方が負担を感じやすい仕事
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方は、電話対応や対面でのやり取りが中心の仕事で負担を感じやすい。
- マルチタスクや即時対応が求められる仕事では、情報処理が追いつかず、疲労やストレスが大きい。
- ただし、向いているかどうかは職種名だけでは決まらず、仕事内容や職場環境によって負担の大きさは変わる。
聴覚情報処理障害の方にとって、業務の進め方や評価のされ方が特性と合っていない場合、ストレスを感じやすいことがあります。
これは能力や努力の問題ではなく、仕事や職場との相性によるものです。
特に、音声情報に大きく依存する仕事や、その場の判断や即時対応が求められる仕事では、聞き取りの負担が積み重なり、強い疲労やストレスにつながりやすくなります。
電話対応や対面コミュニケーションが中心の仕事
口頭でのやり取りが業務の中心となる仕事では、聞き逃しや理解のズレが起こりやすくなります。また、確認や聞き返しが必要になる場面が多く、精神的な負担を大きく感じてしまう可能性があります。
- コールセンター(電話対応が主業務)
- 接客業(飲食店スタッフ、販売員、ホテルスタッフなど)
- 営業職(対面・電話でのやり取りが中心)
- 受付業務(来客対応や電話取次が多い職種)
- 対人援助職など、常に声かけが必要な仕事
マルチタスクや即時対応が求められる仕事
その場で素早く反応することが求められる仕事では、情報処理が追いつかず、焦りやミスにつながりやすくなります。
複数の指示を同時に受ける環境では、特性による負担がさらに大きくなります。
- 飲食店スタッフ(注文対応・会計・配膳を同時進行)
- 医療事務や受付(電話・来客・入力を同時に対応)
- コールセンター(複数案件を続けて処理)
- 小売店のレジ業務(接客と金銭対応を並行)
- 現場系の仕事(その場判断が多い職種)
【注意】向いていない仕事の中でも、例外はある
ここまで紹介した仕事は、聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方にとって負担が大きくなりやすい傾向があります。しかし、すべての職場が同じとは限りません。
同じ接客業でも、
といった環境であれば、問題ないこともあります。
「職種名」だけで判断するのではなく、仕事内容や職場環境が自分の特性に合っているかどうかを確認しましょう。
聴覚情報処理障害の方におすすめの仕事の工夫
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方は、音声だけに頼らず、字幕・文字起こし・メモなどで情報を補う工夫が役立つ。
- 電話を減らしてメールやチャットを活用すると、内容を見返しながら落ち着いて対応できる。
- 周囲の雑音や音の重なりを減らすことで、必要な声に集中しやすくなり、聞き取りの負担を軽減しやすい。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)は、耳が聞こえていないのではなく、聞こえた音を頭の中で整理することに時間がかかる特性です。
そのため、仕事では「音だけ」に頼らない工夫を取り入れることが大切です。ここでは、実践しやすい具体的な方法を紹介します。
Web会議では自動字幕・文字起こし機能を使う
Web会議では、自動字幕や文字起こし機能を使うのが効果的です。音声だけでなく文字でも内容を確認できるため、聞き逃しを防ぎやすくなります。
例えば、多くのWeb会議ツールには自動字幕機能があります。会議中に表示された字幕を見ながら話を聞くことで、聞き取れなかった部分をその場で補えるようになります。その結果、理解のズレを減らすことができます。
また、録画や文字起こしデータをあとから見返せる場合は、重要なポイントを再確認できるため、思い込みによるミスを防ぎやすくなります。さらに、会議後に不安が残りにくくなり、精神的な負担も軽くなります。
口頭指示は必ずメモを取り確認するようにする
口頭で指示を受けた時は、その場でメモを取る習慣をつけましょう。文字に残すことで、内容を目で確認できるようになります。
その結果、聞き逃した部分をあとから落ち着いて整理しやすくなり、「本当に合っているか」を自分で確認できるため、思い込みや聞き間違いによるミスを防ぎやすくなります。
また、その場で内容を復唱して確認する方法もおすすめです。
電話対応を減らし、メール・チャットでの対応を行う
電話対応を減らし、メールやチャット中心に切り替えると、やり取りの内容を目で確認できるようになります。その結果、聞き間違いや思い込みによるミスが減ります。
例えば、
といった方法があります。
文字でやり取りができると、自分のペースで内容を読み返せるため、落ち着いて対応しやすくなります。
さらに、やり取りの履歴が証拠として残るため、トラブル時にも状況を説明しやすくなります。
音の刺激を減らす
聴覚情報処理障害がある場合、周囲の雑音が多いと、必要な声の情報をうまく拾いにくくなります。
そのため、できるだけ人の声や機械音などの音の刺激が少ない環境を整えることが大切です。
例えば、
といった工夫があります。
聴覚情報処理障害では、「音が大きいかどうか」だけでなく「音が複雑かどうか」「同時に重なっているかどうか」も負担感を高める要因になるとされています。
そのため、単に静かにするのではなく、「音を整理しやすい環境」をつくることがポイントです。
音の刺激が減ると、必要な声に集中しやすくなります。その結果、聞き返す回数が減り、理解のズレも起こりにくくなります。
聴覚情報処理障害の方が職場に配慮を伝える方法と合理的配慮の具体例
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方は、聞き取りづらさが周囲から見えにくいため、困る場面と助かる対応をセットで伝えると理解されやすい。
- 「何ができないか」ではなく、「どんな配慮があれば力を発揮できるか」を中心に話すのがポイント。
- 合理的配慮は、本人と職場が話し合って決めるもので、状況に合わせて見直していける。
「会議の内容が途中から分からなくなる」「口頭指示を何度も聞き返してしまう」といった聴覚情報処理障害(LiD/APD)の困りごとは、聴力に問題がないため、周囲から気づかれにくいことがあります。
LiD/APD診断と支援の手引きに掲載された、聴覚情報処理障害(LiD/APD)の当事者アンケート(639名)では、職場(学校)での仕事(授業)の遂行やコミュニケーションに困っている方が、約70%にのぼりました。また、困りごとを改善するために必要なこととして、「上司や同僚(先生やクラスメイト)の理解」を挙げた方は58%でした。なお、SNSなどで参加者を募ったアンケートで、対象には学生も含まれます。
そのため、聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方は、困りごとを具体的に整理し、必要な配慮を職場に伝えることが、働き続けるうえで大切になります。ここでは、配慮の伝え方と、合理的配慮の具体例を紹介します。
参考:AMED研究班「LiD/APD診断と支援の手引き(2024年3月)」
伝える前に整理したいこと
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方が配慮をお願いする前に、まずは自分の困りごとと、助かる対応を整理しておきましょう。「聞き取りづらい」と伝えるだけでは、職場の側もどう対応すればよいか分からないためです。
整理のポイント
このように整理しておくと、「聞こえているのに理解できない」という分かりにくい特性が、具体的な場面と対応に置き換わり、相手にも伝わりやすくなります。
また、すべてを一度に伝える必要はありません。特に負担が大きい場面から、一つずつ相談する方法もあります。
面接・入社後の伝え方の例

伝える時は、「特性の説明」「困る場面」「必要な配慮」「できること」の順に話すと、相手が状況をイメージしやすくなります。「できないこと」だけで終わらず、配慮があれば力を発揮できる点も添えるのがポイントです。
例文は、そのまま使うのではなく、自分の状況に合わせて言い換えてみましょう。診断書や主治医の意見書がある場合は、状況を説明する材料になることがあります。必要に応じて、主治医にも相談してみましょう。
合理的配慮の考え方と相談先
合理的配慮とは、障害のある方が職場で働くうえで支障になっていることを改善するために、事業主が負担になりすぎない範囲で行う調整のことです。雇用の分野では、障害者雇用促進法により、事業主に合理的配慮の提供が義務づけられています。
対象となる方は、障害者手帳を持っている方に限定されません。発達障害を含む心身の機能の障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受けている方などが対象とされています。具体的な配慮の内容は、障害のある方が支障となっている事情や必要な配慮を申し出て、事業主と話し合って決めていきます。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方への配慮の例
配慮の内容は、仕事内容や職場の体制によって異なります。職場と話し合いながら、必要に応じて見直していくことが大切です。
職場に直接伝えにくい場合は、就労移行支援やハローワークの専門窓口などの支援機関に、伝え方の整理を相談する方法もあります。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「雇用分野における障害者差別は禁止、合理的配慮の提供は義務です」
聴覚情報処理障害の仕事を選ぶ時のステップ
- まずは、仕事でつらかった場面を書き出し、自分がどんな時に負担を感じやすいかを整理することが大切。
- そのうえで、苦手な環境と働きやすい環境を分けて考えると、仕事選びの軸がはっきりする。
- 働き方の選択肢を知ることで、自分に合う働き方を見つけやすくなる。
ここでは聴覚情報処理障害(LiD/APD)の仕事を選ぶ時のステップを順番に紹介します。
「仕事でつらかったこと」を具体的に書き出します。言葉にすることで、自分がどんな場面で負担を感じやすいかが明確になります。
「雑談が多い(苦手)」「チャット指示がある(得意)」のように環境を仕分けます。できないことではなく「自分に合う環境の条件」が分かり、仕事探しの軸がはっきりします。
在宅勤務、フレックスタイム制、電話対応のない部署、障害者雇用など、多様な選択肢を知りましょう。視野を広げることが、無理なく働き続けられる土台づくりにつながります。
ステップ1:困りごとを書き出す
まずは、仕事で「つらかったこと」を具体的に書き出してみましょう。
例えば、
といった場面です。
困りごとを言葉にすることで、「自分は何ができないのか」ではなく、「どんな場面で負担が大きいのか」が見えてきます。
これにより、どのような環境であると困りごとを感じやすいかが明らかになります。
ステップ2:苦手な環境・得意な環境を整理
次に、困りごとをもとに、苦手な環境と得意な環境を分けて考えてみます。
- 常に雑談が飛び交う職場
- 電話が頻繁に鳴る
- 口頭説明だけで業務が進む環境
- チャットで指示が共有される
- 静かな作業スペースがある
- 一人で進める時間が確保されている
このように整理すると「向いていない仕事」よりも、「合いやすい環境の条件」が明らかになり、仕事探しの軸がはっきりします。
ステップ3:働き方の選択肢を知る
最後に働き方の選択肢を考えてみましょう。
例えば、
などがあります。
「これまでと同じ働き方しかない」と思い込んでいると、選択肢が限られ、不安も大きくなります。
しかし、働き方の幅を広げるだけでも、「こういう形なら続けられるかもしれない」と前向きに考えられるようになります。
自分に合う働き方を知ることは、働き続けるための土台づくりにつながります。
求人・職場見学で確認したいこと
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方が自分に合う条件を整理できたら、実際の求人や職場見学で、その条件が満たされているかを確認します。求人票の職種名だけでは分からない点が多いため、次のような項目を事前に確認しておくと、入社後のミスマッチを減らしやすくなります。
「電話はほとんどありません」と聞いていても、繁忙期だけ電話当番が回ってくる職場もあります。気になる点は、面接や職場見学の場で具体的に質問してみましょう。
聴覚情報処理障害で障害者手帳を取得できる?
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)だけで障害者手帳を取得するのは、現状では簡単ではない。
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)は聴力自体に異常がないことが多く、身体障害者手帳の対象にならない。
- ただし、発達障害や精神疾患を併発している場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象となる可能性がある。
結論からいうと、聴覚情報処理障害(LiD/APD)だけで障害者手帳を取得することは、現状では簡単ではありません。
障害者手帳は、身体障害・知的障害・精神障害などの基準に基づいて交付されます。
しかし、聴覚情報処理障害(LiD/APD)は、耳の聴力そのものに異常がないケースが多く、身体障害者手帳の対象にならないことがほとんどです。
ただし、発達障害や精神疾患を併発している場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象となるケースがあります。
例えば、
といった場合です。
その際は、主治医の診断や生活・就労への影響の程度が判断材料になり、障害者手帳を取得できる場合があります。
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患により、長期にわたって日常生活や社会生活に制約がある方が対象で、障害の程度によって1級から3級に分かれています。申請には、原則として、その精神疾患で初めて医療機関を受診した日(初診日)から6か月以上経過していることが必要です。
なお、手帳がなくても、職場に配慮を相談することや、ハローワークなどで仕事の相談をすることはできます。詳しくは、後の章で紹介します。
参考:長野県精神保健福祉センター「精神障害者保健福祉手帳」
聴覚情報処理障害で仕事について相談できる支援先
- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方が仕事を相談できる先には、就労移行支援、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどがある。
- 困りごとの整理や診断については、発達障害者支援センターや医療機関でも相談できる。
- 就労移行支援では、体調管理や就職準備に加えて、自分に合う仕事や働き方を整理しながら就職を目指す。
ここでは、仕事について相談できる主な支援先を6つ紹介します。それぞれ役割が異なるため、今の状況に合わせて使い分けましょう。
就労移行支援
就労移行支援は、障害のある方が一般企業での就職を目指すための福祉サービスです。原則として18歳から65歳未満の方が対象で、体調管理から就職のサポートを受けられます。
例えば、次のような支援を受けることができます。
就労移行支援を利用することで次のような効果を期待できます。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方の場合、「どんな環境なら負担が少ないか」を一緒に整理してもらえる点が大きなメリットです。
また、「自分に何が向いているのか分からない」という状態から、選択肢を具体的にイメージできるようになることもポイントです。
就労移行支援manaby(マナビー)について
就労移行支援manaby(マナビー)は、聴覚情報処理障害(LiD/APD)などの障害がある方が「自分らしく働く力」を身につけられるようサポートしています。
一人ひとりの特性や今の不安に寄り添いながら、「どんな働き方なら無理せず続けられるか」を一緒に考える支援を行っています。
「聞こえているのに理解できないつらさを抱えている」「口頭指示についていけず、自信をなくしている」という方も、就労移行支援manaby(マナビー)で今の状態に合った働き方を見つけることができます。
まずは一度話を聞いてみませんか?
あなたにぴったりの就労移行支援は?
「就労移行支援ってたくさんあって、どれを選べばいいかわからない…」
そんなお悩みを抱えていませんか?
5つの簡単な質問に答えるだけで、あなたの希望や体調に合った事業所のタイプがわかります。
質問 1 / 5
質問 2 / 5
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質問 3 / 5
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質問 5 / 5
質問 5 / 5
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あなたにぴったりな就労移行支援のタイプは…
プログラミングやWebデザインなど、特定の専門スキル習得に強い事業所です。「手に職をつけて就職したい」「在宅ワークを目指したい」という方にぴったりです。
チェックポイント:
デザインや動画編集など、最新ソフトが学べる環境が整っているか確認しましょう。
実際の事業所の雰囲気を見ることで、より具体的に働くイメージが湧いてきます。まずは見学や相談に行ってみましょう!
あなたにぴったりな就労移行支援のタイプは…
心理カウンセラーが常駐していたり、短時間からの通所を認めてくれたりする、体調管理重視の事業所です。「まずは生活リズムを整えたい」という方に寄り添ってくれます。
チェックポイント:
休憩室の有無や、急な体調不良時の柔軟な対応を確認しましょう。
実際の事業所の雰囲気を見ることで、より具体的に働くイメージが湧いてきます。まずは見学や相談に行ってみましょう!
ハローワーク(障害者専門窓口)
ハローワークには、障害のある方向けの専門窓口があります。障害特性に配慮した求人の紹介や、就職相談を受けることができます。
次のような支援を受けることができます。
専門窓口では、障害特性を踏まえた求人提案を受けられることがあります。
障害者雇用で仕事を探す場合は、原則として障害者手帳が必要です。ただし、一般雇用についての相談や情報提供は、手帳がなくても受けられます。
ハローワークは、求人紹介や就職活動のサポートが中心の機関です。そのため、条件が合えば比較的早く仕事を見つけられる可能性があります。
一方で、体調の安定や生活リズムの改善、働く準備のトレーニングといった支援は基本的に行っていません。
そのため、体調を整えながら向いている仕事や環境を整理し、「長く働く」という視点を大切にしたい場合は、就労移行支援の利用を検討するのも一つの方法です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害のある方に対して専門的な職業リハビリテーションを提供する公的な機関です。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営しており、全国47都道府県に設置されています。
例えば、次のような支援を受けることができます。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方の場合は、聞き取りの負担が大きい場面を整理したり、職場で必要な配慮を調整したりする際に、職業評価やジョブコーチ支援が役立つことがあります。
利用の流れや対象は地域によって異なるため、まずは最寄りのセンターに問い合わせてみましょう。
参考:厚生労働省「地域障害者職業センターの概要」
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の身近な地域で、就業面と生活面の相談・支援を一体的に行う窓口です。
例えば、次のような支援を受けることができます。
仕事と生活の両面から相談できるため、「仕事が続くか不安」「生活リズムが整わない」といった悩みを、あわせて整理したい方にも合っています。ハローワークや地域障害者職業センターなどの関係機関と連携しながら支援が行われます。
参考:厚生労働省「障害者就業・生活支援センターの概要」
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、各都道府県・指定都市に設置されており、発達障害のある方やその家族に対して、相談支援、発達支援、就労支援、情報提供などを行っています。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)は、発達障害と併存することがあるため、発達特性の面からも困りごとを整理したい場合に、相談先の一つになります。
就労支援も行っているため、仕事で困っている場面を整理したいときにも相談できます。
参考:厚生労働省「発達障害者支援施策の概要」
医療機関(診断・相談)
聴覚情報処理障害(LiD/APD)が気になる場合は、まず耳鼻咽喉科で聴力検査を受け、聴力そのものに問題がないかを確認する方法があります。
主治医がいる場合は、仕事で困っている場面を伝えておくと、職場に配慮を相談する際の診断書や意見書についても相談しやすくなります。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の診断の流れについては、「診断はどこで受けられますか?」で紹介しています。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)とは

- 聴覚情報処理障害(LiD/APD)は、耳の聞こえに大きな問題がなくても、聞こえた音を理解・整理しにくい特性。
- 「聞こえているのに理解できない」ため、周囲に気づかれにくいことも特徴である。
- 難聴とは異なり、聴力検査では異常が見つからないことが多い。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)は、耳の聞こえ自体に大きな問題がないにもかかわらず、聞こえた音をうまく理解・整理することが難しい特性です。
例えば、
といった困りごとがみられることがあります。
「聞こえているのに理解できない」という状態が起こるため、周囲から気づかれにくいのも特徴です。
難聴(聴覚障害)は、耳の聞こえそのものが低下する状態です。一方、聴覚情報処理障害(LiD/APD)は、聴力は保たれていても、聞こえた音を脳で整理・理解する段階で困難が生じる点が異なります。
聴力検査で異常が見つからない場合でも、騒がしい場所や複数人での会話で聞き取りにくさが続くときに、聴覚情報処理障害(LiD/APD)が疑われることがあります。「LiD」は、聞き取りの困難さ(Listening difficulties)を指す言葉で、近年はAPDとあわせて使われています。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の詳しい特徴や原因、難聴との違いについては、別の記事で解説しています。
参考:AMED研究班「LiD/APD診断と支援の手引き(2024年3月)」
聴覚情報処理障害の仕事に関するよくある質問
ここでは聴覚情報処理障害(LiD/APD)の仕事に関するよくある質問について、紹介します。
聴覚情報処理障害があることを、職場に伝えたほうがいいですか?
必ず伝えなければならない、という決まりはありません。大切なのは、「伝えることで働きやすくなるかどうか」です。
例えば、
といった配慮があれば負担が軽くなる場合は、伝えることで働きやすくなる可能性があります。
一方で、伝え方や職場の理解度によっては、不安を感じることもあります。まずは信頼できる上司や人事担当者に相談するなど、段階的に考える方法もあります。
障害者手帳の対象になりますか?
聴覚情報処理障害(LiD/APD)だけで障害者手帳を取得することは、現状では難しいです。耳の聴力に異常がない場合、現在の基準では身体障害者手帳の対象にならないことが多いためです。
ただし、発達障害や精神疾患を併発している場合は、精神障害者保健福祉手帳の対象となる可能性があります。判断は主治医の診断や生活への影響の程度によって異なります。
聴覚情報処理障害と発達障害は関係がありますか?
聴覚情報処理障害(LiD/APD)は、発達障害と併存することがあります。
LiD/APD診断と支援の手引きによると、大阪公立大学で検討された聴覚情報処理障害(LiD/APD)の患者のほぼ80%に、得意な分野と不得意な分野の差が大きい「発達の凸凹」がみられたと報告されています。また、当事者アンケートでは、発達障害の診断を受けている方が21%で、診断はないものの発達の悩みがあると考える方を含めると77%でした。
ただし、必ずしも発達障害があるとは限りません。インターネットの情報だけで自己判断するのではなく、気になる症状がある場合は医療機関に相談することが大切です。
診断はどこで受けられますか?
まずは耳鼻咽喉科で聴力検査を受け、聴力そのものに問題がないかを確認する方法があります。LiD/APD診断と支援の手引きでは、聞き取り困難の自覚があり、純音聴力検査と両耳の語音明瞭度が正常範囲であるものを、LiD/APDと考えることが提唱されています。
診断後は、聞き取りの特性を把握するための追加検査や、発達の評価などを行い、支援につなげることがあります。ただし、診断や評価に対応している医療機関は限られており、地域によって異なります。受診を考えている場合は、事前に電話などで対応可能かどうかを確認すると安心です。
聴覚情報処理障害(LiD/APD)の診断名がつくかどうかにかかわらず、困りごとが続いている場合は、仕事の相談ができる支援機関に早めに相談する方法もあります。
参考:AMED研究班「LiD/APD診断と支援の手引き(2024年3月)」
在宅ワークなら安心ですか?
在宅ワークは、周囲の雑音を自分で調整でき、チャットやメールでのやり取りが中心になりやすいため、聴覚情報処理障害(LiD/APD)の方にとって働きやすい場合があります。
一方で、在宅でもWeb会議や通話が多い職場では、画面越しの音声だけで話を理解する負担が大きくなることがあります。対面と違って、表情や口の動きが見えにくくなる場面もあります。
在宅ワークを選ぶ時は、Web会議の頻度に加えて、字幕・文字起こし機能が使えるか、チャットで指示がもらえるかも確認しましょう。
聴覚情報処理障害で仕事に悩んだ時、どこに相談すればいいですか?
まずは、主治医や医療機関に相談することが一つの方法です。困りごとが特性によるものかどうか、専門的な視点で整理してもらえます。
また、就労移行支援やハローワークの専門窓口でも相談が可能です。特性に配慮した仕事探しや、配慮事項の整理をサポートしてもらえます。
一人で抱え込まず、第三者と一緒に状況を整理することで、「何がつらいのか」「どうすれば軽くなるのか」が見えてきます。
聴覚情報処理障害の特性を知ることが、無理のない仕事選びに繋がる
聴覚情報処理障害(LiD/APD)があると、会議や電話対応、口頭指示などで強い負担を感じることがあります。
しかし、それは能力不足ではなく、音情報の処理に時間がかかる特性によるものです。
そのため大切なのは、「できないこと」に目を向けることではなく、どんな環境なら負担が軽くなるのかを知ることです。
例えば、
といった条件がそろうだけで、働きやすさは大きく変わります。
また、「口頭指示を文字で補足してもらう」「電話対応を減らす」といった工夫をするのも一つの方法です。
もし一人で整理するのが難しい場合は、就労移行支援やハローワークなどの支援機関に相談する方法もあります。
狩野淳 (臨床心理士・公認心理師)
聞き取りづらさがある状態で働き続けること自体、大きなエネルギーを使っています。周囲が気づかない努力を重ねてきた可能性もあります。
うまくいかなかった出来事は、能力の証明ではなく、負荷がかかりすぎていたというサインかもしれませんよ。
これまでの経験を否定材料にするのではなく、自分の特性を知るきっかけとして捉え直す視点も必要なのです。