【防災の日】発達障害の方168名に聞いた、災害時の避難所での不安とは?

9月1日は「防災の日」。発達障害の方にとって、避難所の「音」や「光」、「人との距離感」といった環境は、大きなストレス要因となる可能性があります。
そこで今回、防災の日にあわせて、発達障害であるADHD(注意欠如・多動症)・ASD(自閉スペクトラム症)・LD(学習障害)の168名を対象に「避難所での不安」に関するアンケートを実施しました。
アンケート概要

調査内容:「避難所での不安」に関するアンケート調査
調査方法:インターネット調査
調査期間:2025年8月19日~2025年9月2日
調査人数:168名(男性84名 女性84名)
年代:20代(51名)・30代(73名)・40代(33名)・50代(11名)
- 年齢を選択してください
- 性別を選択してください
- 過去に地震・台風・大雨などで避難した経験はありますか?
- 避難所の環境について「最も不安に思うこと」「辛そうだと感じること」を教えてください
- 普段から災害に備えて意識していることはありますか?
過去に避難した経験がある方は6割以上

- はい 101票(60.1%)
- いいえ 67票(39.9%)
「過去に地震・台風・大雨などで避難した経験がある」と答えた方は101名(60.1%)でした。一方、「避難経験はない」と答えた方は67名(39.9%)にとどまりました。
この結果から、発達障害のある方の多くが実際に避難所を利用した経験を持っていることがわかります。
避難所で最も多い不安は「安心して過ごせる場所がない」

- 安心して過ごせる場所がなく、落ち着くことができない 62票(36.9%)
- 周囲に気を遣いすぎて疲れてしまう 39票(23.2%)
- 薬が手に入らない/病院に行けない 29票(17.3%)
- 強い刺激(音・光・におい・衣類など)が多い 24票(14.3%)
- 困った時に相談できる人がいない 11票(6.5%)
- 特に不安はない 1票(0.6%)
- その他 2票(1.2%)
「避難所の環境について最も不安に思うこと」を尋ねたところ、最も多かったのは「安心して過ごせる場所がなく、落ち着くことができない」(36.9%) という回答でした。
次いで、「周囲に気を遣いすぎて疲れてしまう」(23.2%)、「薬が手に入らない/病院に行けない」(17.3%)、「強い刺激(音・光・におい・衣類など)が多い」(14.3%) と続きます。
災害への備えは「備蓄」が中心

- 家に備蓄(食料・水・ライトなど)を置いている 108票
- 携帯・モバイルバッテリーを常に充電しておく 69票
- 薬を多めにもらう 66票
- 音や光などの刺激を和らげるものを用意 46票
- 支援者や家族と避難時の連絡方法を決めている 42票
- 避難先を事前に確認する 33票
- 通院先や支援機関の連絡先をメモ/スマホに登録 24票
- 特に何もしていない 7票
- その他 1票
「普段から災害に備えて意識していること」(複数回答可)を尋ねたところ、最も多かったのは『家に備蓄(食料・水・ライトなど)を置いている』(108人)でした。
また、「携帯・モバイルバッテリーを常に充電しておく」(69人)、「薬を多めにもらう」(66人)といった回答も多く、日常生活に欠かせない電源や薬の確保を重視する傾向が見られました。
さらに、「音や光などの刺激を和らげるものを用意」(46人)、「支援者や家族と避難時の連絡方法を決めている」(42人)など、発達障害特有の困りごとを意識した備えを回答する方も多かったです。
避難所で求められる配慮や支援とは?当事者の声

アンケートでは、避難所生活で「どのような配慮や支援があると助かるか」についても伺いました。回答内容を整理すると、大きくいくつかのテーマに分けられます。
静かで落ち着ける、刺激を避けられるスペースがほしい
発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)の方は感覚過敏を抱えていることが多く、声・物音・照明などの刺激が常にある避難所環境では強いストレスを感じるため、パーテーションの配置や照明の明るさが異なるスペースを作ってほしいといった配慮を希望される方が多いようです。
医療機関の連携や薬の確保をしてほしい
発達障害のある方だけでなく、持病や精神疾患で日常的に薬を必要とする人にとって、薬は安心して生活するための命綱です。ところが災害時には、普段のように診察や処方を受けることが難しいこともあります。そのため、「特例的に処方を受けられる制度」や「薬を取りに行ってもらえる支援」があれば安心できる、という声が寄せられました。
具体的な情報提供・相談窓口がほしい
「発達障害の方(その傾向のある方)」向けの専門相談窓口を設けていただけると、安心します。ASD当事者の私は、空気を読むことが苦手なため、説明を求めたら具体的でわかりやすい説明をしてくださる方が相談窓口にいらっしゃると、避難にも心強いです。
先の見えない状況は誰にとっても不安ですが、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つ方にとっては「曖昧さ」が大きなストレスにつながります。実際にアンケートでも、「具体的で分かりやすい説明や流れを伝えてほしい」との声がありました。さらに、「困っていることを言葉にして他人に伝えるのが難しい」という悩みも挙がっています。こうした背景から、発達障害のある方に対応できる相談窓口や、支援者が寄り添って状況を丁寧に聞き取る体制、心理的に安心できる環境や専門家によるサポートが求められていることが分かりました。
発達障害の方にとって避難所で必要な配慮とは

今回のアンケートから、発達障害(ADHD・ASD・LD)のある方にとって避難所で特に困りごととなるのは、
- 安心して過ごせる場所がなく落ち着けないこと
- 周囲に気を遣いすぎて疲れてしまうこと
- 薬が手に入らない/病院に行けないこと
という順番で多く挙げられました。
一方で、求められている配慮としては、
- パーテーションや個別ブースなどの静かな休息スペース
- 薬や医療にアクセスできる仕組み
- わかりやすく具体的な情報や相談窓口
- 心理的に安心できるサポートや声かけ
などがありました。
こうした声を踏まえて小さな工夫が積み重なれば、発達障害の方にとっても、そして誰にとっても、より過ごしやすい避難所に近づいていくのではないでしょうか。