傷病手当金とは?支給までの流れ・申請方法・注意点を分かりやすく整理

- 傷病手当金とは
- どんな時に使える制度?
- 傷病手当金の支給条件|5つのチェックポイント
- 健康保険(社会保険)に加入している
- 業務外の病気やケガによる休職である
- 働けない状態を医師が証明している
- 連続する3日間を含む4日以上仕事を休んでいる
- 給与が支払われていない期間がある
- 傷病手当金はいくらもらえる?支給額の目安と計算のしかた
- 支給額の目安は「平均標準報酬月額の3分の2」
- 保険に入ってから1年未満だと、手当金が少なくなることもあります
- お給料を一部もらっていると、その分だけ手当金は減ります
- 傷病手当金はいつまでもらえる?振り込まれる時期の目安も解説
- もらえる期間は、最長で1年6ヶ月まで
- 退職しても条件を満たせば、受け取りを続けられます
- いつ振り込まれる?支給までの期間は?
- 傷病手当金の申請方法の流れ
- 傷病手当金がもらえない原因・注意すべきポイント
- 申請時のミスで「もらえない」ケース
- 申請の期限を過ぎると、傷病手当金がもらえなくなる
- 受診なしでは申請できない
- 退職日に出勤すると、傷病手当金がもらえない
- 制度上「対象外」になるケース
- 自営業やフリーランスの方は対象になりません
- 他の制度と重なると、受け取れないことがあります
- 働いているとみなされると支給されないことがあります
- 傷病手当金と他の制度はどう違う?よくある制度との使い分け方
- 有給休暇と傷病手当金の違い
- 労災保険(休業補償給付)と傷病手当金の違い
- 失業手当と傷病手当金の違い
- 傷病手当金だけじゃない?あわせて使える公的な支援制度もチェック
- 通院にかかるお金が負担に感じる方は「自立支援医療制度(精神通院)」も検討を
- お金に困ったときは「生活費の貸付制度」もあります
- 傷病手当金のこと、困ったらどこに相談すればいい?
- まずは、自分が入っている健康保険の窓口に確認してみよう
- 勤務先の人事・総務にも相談を
- 通院している病院・クリニックの医師にも相談を
- 傷病手当金が使えない場合は、市区町村の相談窓口も
- 手続き代行をお願いしたい場合は、社会保険労務士
- 傷病手当金に関するよくある質問
- 傷病手当金ってそもそも何ですか?
- どんな病気やケガが対象になるの?うつ病でももらえますか?
- どこに申請すればいいですか?
- パート・アルバイトでももらえるんですか?
- 申請からどれくらいでお金が振り込まれますか?
- 退職したあとでも申請できますか?
- 診断書は必要ですか?病院ならどこでもいい?
- 家族の扶養に入っているけど、自分で傷病手当金をもらえますか?
- 傷病手当金で生活の不安を減らし、自分の回復に集中しよう
「もしも病気やケガで仕事を休むことになったら、お給料はどうなるんだろう…」と不安を感じたことはありませんか?
そんな時に心強い味方となってくれるのが「傷病手当金」です。
傷病手当金は、会社員や公務員、パートやアルバイトで健康保険に加入している方が、病気やケガで働けなくなった時に給与の代わりとして受け取れるお金です。
この記事では、傷病手当金の基本的な仕組みや支給される条件、申請方法まで分かりやすく解説します。
この記事のまとめ
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傷病手当金とは
健康保険に加入している方が、業務外の病気やケガで働けなくなった際、給与の代わりに受け取れるお金 -
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傷病手当金の支給額と受給期間
支給額は、おおよそ月給の3分の2。最長で1年6ヶ月間受給できる
傷病手当金とは

この章のポイント
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傷病手当金とは
病気やケガで仕事を休んだとき、生活を支えるために健康保険から支給される制度 -
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どんな時に使える?
仕事と無関係の病気やケガで長期間働けず給与が出ないときに利用できる
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休むことになった時、生活が困らないように支えてくれる制度です。健康保険に加入している会社員やパート、アルバイトの方が対象です。なお、公務員には共済組合の独自制度があり、内容が異なる場合があります。
参考:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
どんな時に使える制度?
傷病手当金は、仕事とは関係のない病気やケガで長期間働けなくなり、給与をもらえない場合に支給されます。なお、仕事中や通勤中の病気やケガで休む場合は、労災保険の対象となるため傷病手当金は受け取れません。
傷病手当金の支給条件|5つのチェックポイント

この章のポイント
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● 傷病手当金の支給条件チェックリスト
傷病手当金を受け取るには、次の5つの条件をすべて満たしている必要があります。
健康保険(社会保険)に加入している
会社員や公務員など健康保険に加入している方が対象です。パートやアルバイトでも条件を満たせば受給可能です。
※公務員の方は共済組合の制度内容にご注意ください。
業務外の病気やケガによる休職である
傷病手当金は、仕事が原因ではない病気やケガで会社を休む場合に支給される制度です。
業務中や通勤中のケガや病気は、労災保険の給付が適用されるため、傷病手当金の対象にはなりません。
働けない状態を医師が証明している
医師が「労務不能」と診断し、「健康保険傷病手当金支給申請書」おいし記入欄に必要事項を記入してもらうことが支給の条件です。本人の申し出だけでは受給できません。
連続する3日間を含む4日以上仕事を休んでいる
最初に仕事を休み始めた日から、3日間連続で休むことが必要です。この期間を「待期期間」と呼び、土日祝日や有給休暇も含まれます。
ここで重要なのは、この期間中に「傷病のため働けない(労務不能)」と医師に認められることです。
医師が労務不能と判断した場合、4日目以降も仕事を休んでいれば、傷病手当金の支給対象となります。
例
- 8/1~8/3の3日間を連続して休む(待機期間が完了)
- 8/4以降も仕事を休んでいる場合、8/4から傷病手当金の支給対象
給与が支払われていない期間がある
休んでいる期間に給与が支払われていないことが傷病手当支給の条件で、給与の一部が支払われた場合でも、傷病手当金の支給額より少ない時は差額が受け取れます。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金について」
傷病手当金はいくらもらえる?支給額の目安と計算のしかた

この章のポイント
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傷病手当金の支給額
月給の約3分の2が目安 -
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支給額に影響するポイント
保険加入期間が1年未満の場合、手当が少なくなることも
「傷病手当金はどのくらいのお金がもらえるの?」と気になるところです。傷病手当金の金額は、人によって異なります。注目すべきポイントは給与の額です。
支給額の目安は「平均標準報酬月額の3分の2」
傷病手当金は、月給のおよそ3分の2が目安になります。
計算に使われるのは「標準報酬月額」や「平均標準報酬月額」という基準です。
用語 | 意味 |
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標準報酬月額 | 社会保険で使う、給与の基準額のこと。主に4月から6月に受け取った給料を平均して、その金額を一定の区分に当てはめて決めます。 |
平均標準報酬月額 | 支給開始日前の12か月間における標準報酬月額を合計し、その月数で割ったもの。傷病手当金の計算に使われます。 |
1日あたりの支給額の計算式
(平均標準報酬月額÷30日)×3分の2
計算例
例えば、東京都で働いていて4月から6月に受け取った給与の平均が 30万円 だったとします。健康保険・厚生年金保険の保険料額表から標準報酬月額も 30万円 ということが分かります。
この場合、先ほどの計算式に当てはめると
- 30万円 ÷ 30日 = 1万円(1日あたりの給与)
- 1万円 × 3分の2 = 約6,667円(1日あたりの傷病手当金)
つまり、1日に約6,667円の傷病手当金がもらえます。この金額に仕事を休んだ日数をかけると受け取れる合計額が分かります。
参考:全国健康保険協会「令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)」
「標準報酬月額・標準賞与額とは?」
保険に入ってから1年未満だと、手当金が少なくなることもあります
健康保険に入ってからまだ1年経っていない場合、もらえる傷病手当金が少なくなることがあります。これは、計算に使う「標準報酬月額」が次の2つのうち、金額が低い方になるからです。
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支給開始日以前の連続した数か月の標準報酬月額の平均額
例:支給開始日が10月15日の場合、7~9月の標準報酬月額の平均を使う
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標準報酬月額の平均額
30万円(支給開始日が令和7年3月31日以前の場合)
32万円(支給開始日が令和7年4月1日以降の場合)
お給料を一部もらっていると、その分だけ手当金は減ります
仕事を休んでいる期間に会社から給与を受け取った場合、その分だけ傷病手当金の支給額は減ります。
例えば、1日あたりの傷病手当金が約6,667円で、1日の給与が6,000円なら差額の667円だけが傷病手当金として支給されます。この金額を休んだ日数分もらえる仕組みです。
つまり、傷病手当金の支給額は減りますが手元に入る金額の合計は変わりません。お金の出どころが変わるだけなので、あまり心配しなくても大丈夫です。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金について」
傷病手当金はいつまでもらえる?振り込まれる時期の目安も解説

この章のポイント
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傷病手当金の受給期間
1つの病気やケガにつき最長1年6か月受け取れる - ● 退職後でも条件を満たせば、受給可能
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支給までの期間
申請後おおむね2週間~1ヶ月後に支給される
傷病手当金がもらえる期間や振り込まれる時期について解説します。
もらえる期間は、最長で1年6ヶ月まで
傷病手当金は、1つの病気やケガにつき支給開始日から最長1年6か月受け取れます。途中で仕事に復帰しても同じ病気で再び休む場合は、最初の支給開始日から1年6か月以内であれば残りの期間分を受給可能です。
例えば、うつ病で6か月間傷病手当金を受給して、仕事に復帰したとします。その後、うつ病で再び休んだとしても残りの1年間、傷病手当金を受け取ることができます。
受給期間の注意点
最長で1年6ヶ月という期間は、基本的に同じ病気やケガに限ります。別の病気やケガで休む場合は改めて 1年6か月分 の受給期間が設定されます。病名ごとに期間が決まっていると考えるとわかりやすいです。
ただし、病状の変化や合併症など、例外的に取り扱われるケースもあります。
例
- うつ病で傷病手当金を受給し、いったん復帰した後に肺炎になった場合
肺炎で新たに傷病手当金を申請 - 肺炎が肺がんに移行した場合
状況によっては肺炎での傷病手当金が継続されることも
退職しても条件を満たせば、受け取りを続けられます
退職後でも条件を全て満たせば、傷病手当金の受給が可能です。
条件は以下の通りです。
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退職日までに健康保険に1年以上継続して加入していたこと
※任意継続や国民健康保険の加入期間は含まれません。 -
退職日の前日までに3日以上連続で仕事を休み、退職日も出勤していないこと
※この期間は医師に「仕事ができない」と診断された期間である必要があります。 - 退職日に傷病手当金を受給していた病気やケガで、引き続き仕事ができない状態であること
いつ振り込まれる?支給までの期間は?
傷病手当金は、申請後おおむね2週間~1ヶ月後 に支給されます。具体的な支給日は、加入している保険によって異なるため、直接問い合わせて確認するのがおすすめです。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金について」
「各種給付金 審査期間の目安」
傷病手当金の申請方法の流れ

この章のポイント
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● 傷病手当金の申請手順
- 連続4日以上の休職
- 医師に診断してもらい会社へ報告
- 申請書を入手・記入
- 健康保険組合または協会けんぽへ提出
- 審査・支給
傷病手当金をもらうためには、いくつかの手続きが必要です。基本的な流れを順番に解説します。
まず大前提として、健康保険には大きく2種類あります。
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全国健康保険協会(協会けんぽ)
中小企業などの会社員が多く加入している公的な保険 -
健康保険組合(健保組合)
主に大企業や業界団体が単独・共同で設立している保険
申請の流れは大きく変わりませんが、必要な書類は健康保険を運営している組織(保険者)ごとに異なる場合があります。申請前に勤務先や加入している健康保険に確認しておくと安心です。
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医師の診断・会社へ報告
病院を受診し、「仕事ができない状態である」と医師に診断してもらいます。診断を受けたら、すぐに会社に状況を報告しましょう。 -
申請書を用意
会社の担当部署から「傷病手当金支給申請書」をもらうか、郵送してもらいます。全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している方は、ホームページからダウンロードも可能です。
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申請書記入と必要書類の準備
- 本人(被保険者):病気やケガの状況、休んだ期間などを記入
- 医師など(療養担当者):病気やケガの状態、仕事を休む必要がある期間など傷病状況を記入
- 会社(事業主):休んだ期間や給与の有無など就労状況を記入
これらが揃った傷病手当金支給申請書に加え、保険組合が指定する書類も準備します。 -
加入している組合へ提出
傷病手当金支給申請書と必要書類を加入している健康保険組合、または全国健康健康保険協会(協会けんぽ)に提出します。 -
審査・支給
書類に不備がなければ、通常 2週間~1か月程度で指定口座に傷病手当金が振り込まれます。
必要書類の例
傷病手当金を申請する際、基本の申請書に加えて状況によっては追加の書類を求められることがあります。ここでは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の例をご紹介します。
対象者 | 必要書類 |
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支給開始日以前の12か月以内で事業所に変更があった方や定年再雇用等で健康保険の資格に変更があった方 | 以前の事業所の名称、所在地及び事業所に使用されていた期間がわかる書類 |
障害厚生年金の給付を受けている方 | 年金給付額等がわかる書類 |
障害手当金の給付を受けている方 | |
老齢退職年金の給付を受けている方(申請期間が資格喪失後の場合) | |
労災保険から休業補償給付を受けている方 | 休業補償給付支給決定通知書のコピー |
傷病の原因が第三者の行為(交通事故やけんか等)によるものである場合 | 第三者行為による傷病届 |
被保険者が亡くなられ、相続人が請求する場合 | 被保険者との続柄がわかる「戸籍謄本」等 |
参考:全国健康保険協会「傷病手当金について(制度説明)」
「傷病手当金 支給申請書 記入の手引き」
傷病手当金がもらえない原因・注意すべきポイント

この章のポイント
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● 傷病手当金がもらえない主な原因・注意点申請ミスや記入不備/申請期限の超過/医師の診断がない・曖昧/退職日に出勤してしまう など
せっかく申請しても、傷病手当金をもらうことができないケースがあります。主な原因と注意すべき点をまとめました。
申請時のミスで「もらえない」ケース
申請書に記入漏れや誤りがあると、審査が進まず支給が遅れたり、不支給になることがあります。
- 医師が記入した内容と、会社が記入した内容が食い違っている
- 数字や日付の書き間違い
- 文字が判別しにくい
といったケースが考えられます。提出前に、医師・会社・自分の記入内容を照らし合わせて確認することが大切です。
申請の期限を過ぎると、傷病手当金がもらえなくなる
傷病手当金の申請には期限があります。原則として、仕事を休んだ日の翌日から2年以内 に申請しないと受け取る権利がなくなります。
傷病手当金は1日単位で支給されるため、申請の時効も1日ずつ発生します。
例
5月1日から仕事を休み、5月4日から傷病手当金を受け取る場合、5月4日分の支給についての申請期限は、5月5日から2年間となります。
参考:全国健康保険協会「健康保険給付の時について」
受診なしでは申請できない
医師が「仕事ができない」と判断していない場合や診断内容が曖昧な場合、退職後に初めて受診した場合も支給されません。
退職日に出勤すると、傷病手当金がもらえない
退職日に少しでも出勤すると、「仕事ができる」とみなされ、退職後の傷病手当金の継続受給資格を失います。制服を返しに行ったり、挨拶に行ったりするだけでも出勤扱いになる場合があるので特に注意しましょう。
参考:全国健康保険協会「退職後も傷病手当金の支給を受けるためには条件があります」
制度上「対象外」になるケース
自営業やフリーランスの方は対象になりません
傷病手当金は、会社員や公務員など健康保険に加入している人だけがもらえる制度です。そのため、国民健康保険に入っている自営業やフリーランスの方は対象になりません。
他の制度と重なると、受け取れないことがあります
労災保険・出産手当金・障害年金などの他の公的制度と重複して受給することは原則できません。
例えば、業務中のケガや病気は「労災保険」の対象となるため、傷病手当金は支給されません。また、出産手当金や障害年金を受け取っている場合は、それらが優先され傷病手当金は支給対象外となります。
働いているとみなされると支給されないことがあります
アルバイトや副業、在宅ワーク、会社への連絡などで「働いている」と判断されると、支給対象外になります。短時間でも給与を受け取る仕事は注意が必要です。
傷病手当金と他の制度はどう違う?よくある制度との使い分け方

この章のポイント
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傷病手当金と似た制度
有給休暇/労災保険/失業手当 -
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注意点
傷病手当金とは対象や支給額、申請条件が異なるため、休む理由や状況に応じて使い分ける必要がある
傷病手当金は、病気やケガで働けないときの生活を支える制度です。一方で、有給休暇や労災保険、失業手当なども似たような支援制度として存在します。それぞれの違いと使い分けを整理しました。
有給休暇と傷病手当金の違い
比較項目 | 有給休暇 | 傷病手当金 |
---|---|---|
支給元・支給額 | 会社が「給与」として満額を支給 | 健康保険から給与の約2/3が支給 |
対象条件 | 病気やケガに限らず、自由に取得できる | 原則、業務外の病気やケガの場合が対象 |
取得・申請条件 | 自由に取得可能 | 4日以上連続で休んだ場合に申請可能 |
支給期間・日数 | 年次有給休暇の残日数分まで | 最長1年6ヶ月支給される |
まずは有給休暇を使い切り、その後に傷病手当金を申請するのが一般的です。有給休暇中は給与が支給されるため、傷病手当金との同時受給はできません。
労災保険(休業補償給付)と傷病手当金の違い
比較項目 | 労災保険 | 傷病手当金 |
---|---|---|
対象 | 業務中や通勤中の事故・病気 | 業務外のケガや病気 |
適用外 | 業務外の病気やケガには適用されない | 業務中・通勤中の事故は対象外 |
支給額 | 給与の約80% | 健康保険から給与の約2/3が支給 |
支給期間・日数 | 原則として傷病が治癒(完治)する、もしくは医師から症状固定と診断されるまで | 最長1年6ヶ月支給される |
仕事中のケガや病気には「労災保険」、仕事と関係ない病気やケガには「傷病手当金」を使います。同時に両方を受け取ることはできません。
失業手当と傷病手当金の違い
比較項目 | 失業手当(雇用保険) | 傷病手当金 |
---|---|---|
対象 | 退職後、就職活動をしている「働く意思・能力」がある人 | 働けない(病気・ケガ)場合の生活補償 |
申請方法 | ハローワーク経由で求職申込みが必要 | 健康保険から申請 |
取得条件 | 働けない(療養中)は支給対象外 | 治癒して求職活動できるようになるまで支給 |
同時受給 | 傷病手当金と同時受給は不可(療養中は傷病手当金優先) | 失業手当へ切り替え可能(療養後) |
失業手当は「働ける状態で就職活動をしている方向け」、傷病手当金は「働けない方向け」の制度です。病気やケガが治って働けるようになったら、傷病手当金から失業手当に切り替えることもできます。どちらも同時には受け取れません。
どの制度を使うかは、休んだ理由や支給額、申請条件を確認することが大切です。自分の状況に合った制度を選ぶことで、生活の不安を少しでも減らせます。
傷病手当金だけじゃない?あわせて使える公的な支援制度もチェック

この章のポイント
- ● 通院にかかるお金が負担に感じる方は「自立支援医療制度」
- ● お金に困ったときは「生活費の貸付制度」
傷病手当金の他にも、状況によって利用できる公的な支援制度があります。ここでは代表的な2つを紹介します。
通院にかかるお金が負担に感じる方は「自立支援医療制度(精神通院)」も検討を
精神疾患で通院治療を受けている方を対象に、医療費の自己負担を軽減できる制度です。通常、医療費の自己負担は3割ですが、この制度を利用すると1割にまで減額されます。継続的な通院で医療費の負担が大きい方に役立ちます。
お金に困ったときは「生活費の貸付制度」もあります
失業や長期療養などで生活費に困ったときは、社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」を利用できる場合があります。
利子は低金利、または無利子で借りられ、返済猶予制度もあります。給付金ではありませんが、急場をしのぐための選択肢として活用できます。
参考:厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」
利用する際は、それぞれの支給要件や申請条件を事前に確認することが重要です。
傷病手当金のこと、困ったらどこに相談すればいい?

この章のポイント
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傷病手当金のことを相談できる窓口
健康保険の窓口/勤務先/病院/自治体の窓口/社労士 など
傷病手当金について「よく分からない」「申請方法が不安」というときに相談できる窓口を紹介します。大きく分けて5つの相談先があります。
まずは、自分が入っている健康保険の窓口に確認してみよう
傷病手当金の申請手続きの細かい部分は、加入している健康保険によって少しずつ違うことがあります。まずは、自分が加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県の支部へ相談しましょう。詳しい情報を教えてもらえます。
勤務先の人事・総務にも相談を
休職制度や申請書類、就業規則の確認のために会社の担当部署にも相談しましょう。必要な書類や手続きの流れを教えてもらえます。
通院している病院・クリニックの医師にも相談を
傷病手当金の申請には、医師が就労可能かどうかの判断を行う必要があります。申請書の記入欄に記入してもらうため、通院先の医師にも相談しましょう。
傷病手当金が使えない場合は、市区町村の相談窓口も
もし傷病手当金が使えない場合や別の支援制度を探している場合は、住んでいる市区町村の福祉課や生活支援の窓口に相談してみましょう。生活福祉資金貸付制度や自立支援医療制度などの情報も得られます。
手続き代行をお願いしたい場合は、社会保険労務士
申請手続きや書類準備の代行をしてくれる専門家です。最初は無料で相談できる場合もあり、手続きが不安な方におすすめです。
傷病手当金に関するよくある質問

ここでは、傷病手当金についてよくある疑問にお答えします。
傷病手当金ってそもそも何ですか?
健康保険に加入している方が、業務外の病気やケガで働けず、給与が支払われない場合に生活保障として給付されるお金です。生活費の支えとなり、療養に専念できるよう助けてくれる制度です。
どんな病気やケガが対象になるの?うつ病でももらえますか?
身体の病気やケガだけでなく、うつ病などの精神疾患も対象です。ただし、医師が「労務不能」(仕事ができない状態)と診断し、その証明が必要です。
どこに申請すればいいですか?
加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)の窓口で申請します。
パート・アルバイトでももらえるんですか?
条件を満たしていれば受給可能です。勤務形態に関わらず、健康保険に加入していることが前提となります。
申請からどれくらいでお金が振り込まれますか?
申請内容に不備がなければ、通常は約2週間~1か月程度で支給されることが多いです。
退職したあとでも申請できますか?
退職後も条件を満たしていれば申請可能です。
診断書は必要ですか?病院ならどこでもいい?
傷病手当金の申請では、診断書を提出する必要はありません。「健康保険傷病手当金支給申請書」の医師記入欄(療養担当医師記入欄)を使用します。病院やクリニックの種類に制限はありませんが、医師が必要な情報をきちんと書いてくれるかがポイントです。
家族の扶養に入っているけど、自分で傷病手当金をもらえますか?
本人が健康保険の被保険者であれば受給できます。扶養に入っているだけの場合は対象外です。
傷病手当金で生活の不安を減らし、自分の回復に集中しよう

病気やケガで働くことが難しくなった時に、生活費の心配があると安心して療養に専念できません。そんな時、傷病手当金は給与の代わりに生活を支えてくれる頼もしい制度です。
もしもの時に、この制度の存在を知っているだけでも、心の安心感は大きく変わります。
まずは、自分の状況を整理し、受給条件に当てはまるかを確認してみましょう。申請手続きにはいくつかのステップがありますが、加入している健康保険の窓口や会社の担当者、医師など相談できる場所はたくさんあります。
生活の不安を減らして、療養に集中するためのサポートとして傷病手当金を積極的に活用することをおすすめします。