自立支援医療制度は本当にデメリットがある?メリット・注意点・よくある誤解を解消

- 結論:自立支援医療制度のデメリットはほぼない
- 自立支援医療制度を利用するメリット
- 医療費が1割負担になる
- 精神科デイケアや訪問看護も対象になる
- 手続きのハードルが低め
- そもそも自立支援医療制度とは?
- 自立支援医療制度のよくある誤解
- 制度利用が会社や周囲に知られる?
- 就職や転職で不利になる?
- ローンやクレジットに影響する?
- 保険加入に不利になる?
- 自立支援医療を使った場合、医療費はどう変わる?
- 自立支援医療の利用がおすすめの方
- 障害者手帳との違いとは?
- 自立支援医療に関するよくある疑問
- 自立支援医療の更新を忘れたらどうなる?
- どのくらいで受給者証が届く?
- 医療費以外にも使える?
- 生活保護などの他の制度と併用できる?
- 自立支援医療はデメリットよりメリットの方が多い制度
自立支援医療を利用するときに「デメリットはあるのかな?」と不安に思う方も少なくありません。
自立支援医療制度は医療費の負担を減らすための助けとなる制度ですが、仕組みをよく理解していないとデメリットにつながる場合もあります。安心して利用するためには、制度の内容をきちんと知っておくことが大切です。
この記事では、自立支援医療のメリットとともにデメリットはあるのか、そして制度を利用する前に知っておきたい注意点をわかりやすく解説します。
この記事のまとめ
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自立支援医療のデメリット
自立支援医療には、ほとんどデメリットがない。強いて挙げるとすれば、利用できる医療機関や薬局が事前に指定したものに限られること、毎年更新手続きが必要なこと -
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自立支援医療の利用がおすすめの方
医療費の負担が大きい方や、長期的な治療が必要な方におすすめの制度
結論:自立支援医療制度のデメリットはほぼない

この章のポイント
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自立支援医療制度のデメリットはほぼない
強いて挙げるなら、以下の2点
指定された医療機関でしか使えない/1年ごとの更新が必要
自立支援医療のデメリットはほとんどありません。強いて挙げるなら、以下の2点がデメリットと言えます。
指定された医療機関でしか使えない
自立支援医療は、都道府県から指定された病院・診療所・薬局・訪問看護などでのみ利用できます。現在通っている医療機関が指定されていない場合は、転院や変更の手続きが必要です。
さらに、申請時に決めた医療機関・薬局以外で支援を受ける場合は、事前に変更申請を行わなければなりません。複数の病院や薬局を登録することは原則できないため、通院先の自由度が下がる点は注意が必要です。
1年ごとの更新が必要
受給者証の有効期限は通常1年間です。継続して利用する場合は、毎年更新手続きを行う必要があります。更新の際には診断書などの書類提出が求められるため、手間に感じることもあります。
これらの制限はあるものの、医療費を軽減できる経済的メリットはデメリットを大きく上回ります。自立支援医療は、安心して治療を続けるための大きな支えとなる制度です。
参考:大阪市健康局「自立支援医療(精神通院)利用できる医療機関について」
厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」
自立支援医療制度を利用するメリット

この章のポイント
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医療費が1割負担になる
通常、自己負担3割の医療費が1割に軽減される -
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精神科デイケアなども対象
精神科の通院治療だけではなく、精神科デイケアや訪問看護なども対象 -
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手続きのハードルが低め
申請手続きのハードルが比較的低い
自立支援医療制度を利用することで、経済的な負担を軽くしながら安心して治療を続けられるようになります。主なメリットは次の3つです。
医療費が1割負担になる
通常、医療費の自己負担は3割ですが、自立支援医療の利用することで1割に軽減されます。
さらに、所得の状況や「重度かつ継続」にあたる精神疾患の場合には月ごとの自己負担上限額も設定されるため、安心して治療を続けやすくなります。
精神科デイケアや訪問看護も対象になる
自立支援医療の対象は、精神科の通院治療だけではありません。精神科デイケアや訪問看護など、生活を支えるサービスも医療費軽減の対象になります。日常生活のサポートが必要な場合でも、制度を利用すれば経済的な負担を抑えることができます。
手続きのハードルが低め
申請手続きのハードルが比較的低いこともメリットの一つです。
- 申請は市区町村の窓口で行うことができる
- 対象が「精神疾患により通院での治療が必要な方」と幅広い
- 条件を満たしていれば、申請が通ることが多い
このような理由から、手続きのハードルが低く、利用しやすい制度といえます。
参考:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」
そもそも自立支援医療制度とは?

この章のポイント
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自立支援医療とは
精神疾患の治療費の自己負担を軽くし、継続的に治療を受けられるようにする制度
自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患による治療が長期間必要な方の経済的負担を軽減し、安心して継続的な治療を受けられるようにするために設けられた公費負担医療制度です。
参考:厚生労働省「自立支援医療制度の概要」
自立支援医療制度のよくある誤解

この章のポイント
- ● 利用が就職・ローン・保険に不利になることは基本的にない
自立支援医療制度について、様々な誤解が存在します。考えられる4つの誤解について解説します。
制度利用が会社や周囲に知られる?
自立支援医療制度を利用していることが、本人の申告なしに会社や周囲に伝わることは基本的にありません。
就職や転職で不利になる?
制度を利用していることが、就職や転職で不利になることはありません。
面接で健康状態について質問されることはあっても、制度利用を伝える義務はなく、本人が話さない限り知られることはありません。
ローンやクレジットに影響する?
自立支援医療を利用しているかどうかが、ローンやクレジットカードの審査に影響することはありません。審査では収入や資産、返済能力が重視されるため、制度利用の有無は判断材料にならないのです。
保険加入に不利になる?
制度を利用しているかどうかは、生命保険の加入可否には関係ありません。
ただし、精神疾患の治療歴や健康状態の告知内容によっては、保険料が高くなったり、加入を断られることがあります。
自立支援医療を使った場合、医療費はどう変わる?
この章のポイント
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自己負担が3割から1割に軽減
月数千円~年間数十万円の差額になるケースも
自立支援医療を利用すると、自己負担が通常の3割から1割に軽減されます。実際にどのくらい差が出るか、月額・年間でシミュレーションしてみました。
医療費(月額) | 通常(3割負担) | 自立支援医療(1割負担) | 月の差額 | 年間の差額 |
---|---|---|---|---|
1万円 | 3,000円 | 1,000円 | 2,000円 | 24,000円 |
4万円 | 12,000円 | 4,000円 | 8,000円 | 96,000円 |
8万円 | 24,000円 | 8,000円 | 16,000円 | 192,000円 |
さらに、所得区分や「重度かつ継続」の精神疾患に該当する場合は、月ごとの自己負担上限額が設定されます。そのため、医療費が高額になってもそれ以上支払う必要がなく、さらに負担を抑えられるケースもあります。
参考:厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」
自立支援医療の利用がおすすめの方

この章のポイント
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自立支援医療の利用がおすすめの方
医療費負担が高い、長期治療が必要、金銭面で治療に不安がある方
以下のような方は、自立支援医療制度の利用をぜひ検討してみてください。
- 医療費負担が高い方
- 長期的な治療が必要な方
- お金の問題で治療をやめようか迷っている方
経済的な理由で治療に不安を感じている方にとって、自立支援医療は大きな助けになります。自己負担が通常3割から1割に減るため、金銭面の心配を減らして、安心して治療に集中することができます。
障害者手帳との違いとは?
この章のポイント
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自立支援医療
医療費負担を減らし、安心して治療を続けられるようにするための制度 -
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精神障害者保健福祉手帳
日常生活や社会での生活を支えるための制度
自立支援医療と精神障害者保健福祉手帳は、どちらも精神疾患を抱える方を支える制度ですが、目的や受けられる支援内容が異なります。
項目 | 自立支援医療制度(精神通院医療) | 精神障害者保健福祉手帳 |
---|---|---|
目的 | 医療費負担を軽くし、治療を継続しやすくする | 精神障害の程度を公的に認定し、福祉サービスや社会参加を支援する |
対象 | 継続的な通院による治療が必要な方 | 精神疾患により、長期にわたって日常生活や社会生活に制限がある方 |
有効期間 | 1年間 | 原則2年間 |
効果・支援内容 | 医療費の自己負担が3割から1割に軽減され、月ごとの自己負担上限あり | 税控除、公共料金の割引、障害者雇用制度の利用など各種福祉サービスの利用が可能 |
申請条件 | 精神疾患があり、継続的な治療が必要 | 精神疾患があり、初診から6か月以上経過していることが原則 |
一番の違いは「何のためにつくられた制度か」という点です。
自立支援医療:通院や治療のための医療費負担を減らし、安心して治療を続けられるようにするための制度
精神障害者保健福祉手帳:日常生活や社会での生活を支えるための制度で、様々なサービスを受けるための「証明書」の役割を果たす
どちらの制度も、精神疾患と向き合ううえで大切な支えになります。目的に合わせて、必要な制度を活用しましょう。
自立支援医療に関するよくある疑問

自立支援医療に関するよくある疑問について回答します。
自立支援医療の更新を忘れたらどうなる?
自立支援医療の有効期限を過ぎると、制度は利用できなくなります。
再度利用するには「再申請」が必要で、新規手続きと同じ流れで手続きを行う必要があります。
どのくらいで受給者証が届く?
申請から受給者証が発行されるまで、約2〜4か月かかります。
参考:高槻市「自立支援医療(精神通院医療)の利用案内について」
医療費以外にも使える?
自立支援医療はあくまで医療費の自己負担軽減が目的です。
対象となるのは、医療機関での診療費、薬代、訪問看護費などです。
生活費や施設利用費、交通費などには利用できません。
生活保護などの他の制度と併用できる?
自立支援医療は、生活保護を受けている方でも利用可能です。また、障害年金と併用することもできます。
自立支援医療はデメリットよりメリットの方が多い制度

自立支援医療制度には、申請手続きの手間や利用できる医療機関が限られるといった注意点がありますが、医療費を軽減できる経済的なメリットは、そのデメリットを大きく上回ります。
また、申請は自治体の窓口で行うことができ、審査も通りやすいため制度を利用するハードルはそれほど高くありません。この点も大きなメリットです。
もし利用を検討している場合は、まずはかかりつけの医師や自治体の担当窓口に相談してみることをおすすめします。