特例子会社とは?一般企業との違い・メリットデメリット・働き方をわかりやすく解説
- 特例子会社とは?
- 特例子会社の設立背景と現状
- 主な業務内容
- 福利厚生・サポート体制
- 給与・雇用形態
- 特例子会社で働く障害のある方の平均年収(2018年調査)
- 一般の会社との違いを整理
- 特例子会社と一般企業の障害者雇用枠との違い
- 特例子会社はどんな人に向いている?
- 特例子会社に向いている人の特徴
- 特例子会社の1日の流れ
- 特例子会社求人の探し方
- ハローワークで探す
- 就労移行支援で探す
- 求人サイトや企業HPから探す
- 効率よく探すためのポイント
- 特例子会社求人の申し込みの流れ
- 1. 求人情報の収集
- 2. 応募書類の準備
- 3. 応募手続き
- 4. 面接・選考
- 5. 内定・雇用契約
- 特例子会社について相談できる窓口
- ハローワーク
- 就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- こんな時はどの窓口を使う?
- 特例子会社のメリット・デメリットを理解して、自分に合う働き方を選ぼう
「特例子会社って何?」「名前がちょっと難しそう…」と不安に思う方もいるかもしれません。
特例子会社とは、障害のある方の雇用を積極的に進めるために設立された子会社のことです。
障害者雇用に特化しているため、働く環境や制度が整っており、一般企業では難しい配慮や支援を受けながら働くことができます。
この記事では、特例子会社の仕組みやメリット、利用条件、実際の働き方の例について、分かりやすく解説します。
この記事のまとめ
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特例子会社とは
障害者雇用を促進するために設立された認定子会社。障害特性に合わせた業務やサポート体制が整っている -
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特例子会社の特徴
配慮やサポートが手厚く、障害のある方が安心して働ける安定した雇用環境が強み。一方で、給与水準やキャリアの幅は限定的になりやすい点に注意が必要
特例子会社とは?

この章のポイント
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業務内容
事務補助、清掃、製造、物流、サービスなど幅広く調整 -
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サポート
通院休暇、短時間勤務、合理的配慮、専門スタッフによる支援 -
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給与・雇用形態
正社員・契約社員・パートなど、年収101~250万円が中心
特例子会社は、障害者雇用促進法に基づき、厚生労働大臣の認定を受けた子会社です。障害のある方の雇用を増やし、安心して働ける環境を整えることを目的として設立されています。単に障害者を雇用する子会社とは異なり、法律に基づく正式な認定を受けたことで、親会社の法定雇用率の達成にも反映されます。業務内容や働き方、サポート体制がしっかり整っている点も特徴です。
参考:静岡県庁「特例子会社ってなに ?」
特例子会社の設立背景と現状
特例子会社は、1987年の法改正をきっかけに、障害のある方が働きやすい環境を整えるために導入された制度です。通常、親会社の法定雇用率は親会社だけの雇用人数で計算されますが、特例子会社で働く障害のある方の人数は、親会社と一体で雇用率に合算して計算できるという特別な仕組みがあります。この合算が認められるのは、厚生労働大臣の認定を受けた特例子会社のみです。
特例子会社は年々増えており、令和6年6月1日時点で認定を受けている企業は614社。前年より16社増え、障害のある方が働きやすい環境づくりが着実に広がっていることがわかります。
参考:厚生労働省「「特例子会社」制度の概要」「障害者雇用促進法の概要(昭和35年法律第123号)」
主な業務内容
特例子会社での業務は、親会社の仕事に関連した内容から障害の特性に合わせて調整された業務まで幅広く対応しています。2018年の調査によると、業務内容の割合は次の通りです。
| 業務内容 | 割合(%) |
|---|---|
| 事務補助 | 79.1 |
| 清掃・管理 | 50.0 |
| 製造(機械・食品等) | 23.5 |
| 物流 | 20.4 |
| サービス | 16.8 |
| 情報システム | 15.8 |
| クリーニング | 14.3 |
| 福祉・医療 | 12.2 |
| 農業 | 1.0 |
| その他 | 30.1 |
「その他」に分類される業務には、PCのキッティングや解体作業、機械・器具のメンテナンス、ガス検知器の検査、研究試験代行、公的機関への照会業務、手形・小切手の発行、製品の移動作業、ギフトラッピング、事務代行やカフェ業務など多岐にわたる仕事が含まれます。
特例子会社では、特例子会社では、事務補助や清掃といった比較的定型的な業務に加え、専門的な知識や技術を活かせる仕事も多くあります。障害のある方が無理なく働けるよう、業務内容や量を調整し、それぞれの能力や希望、医師の意見、職場環境などを考慮して、個々の障害特性に応じた業務が設計されることが多いのも大きな特徴です。
福利厚生・サポート体制
特例子会社では、障害のある方が働きやすいように様々なサポートを用意している傾向があります。たとえば、通院のための休暇や短時間勤務制度、働きやすい環境づくりのための合理的配慮、障害に応じた評価制度、専門スタッフによる支援などです。ただし、これらは特例子会社固有の制度や認定基準によるものではなく、各社で対応が異なります。
給与・雇用形態
特例子会社で働く障害のある方の平均年収(2018年調査)
| 年収区分 | 割合(%) |
|---|---|
| 1~50万円 | 0.5 |
| 51~100万円 | 0.0 |
| 101~150万円 | 19.7 |
| 151~200万円 | 33.8 |
| 201~250万円 | 26.3 |
| 251~300万円 | 10.6 |
| 301~350万円 | 6.1 |
| 351~400万円 | 2.0 |
| 401~450万円 | 0.5 |
| 451~500万円 | 0.5 |
| 500万円以上 | 0.0 |
2018年度の調査結果によると、特例子会社で働く障害のある方の平均年収は、151~200万円が最も多く33.8%を占めています。次いで201~250万円が26.3%、101~150万円が19.7%となっています。
一方、日本人全体の平均年収は441万円(2018年時点)とされています。特例子会社での給与はこれと比べると低めの傾向がありますが、これは短時間勤務者が多く含まれていることや、職種・業務内容の違いによるものと考えられます。
雇用形態と人数は以下の通りです。
特例子会社の人員構成(2018年調査)
| 分類 | 身体障害 | 知的障害 | 精神障害 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 役員 | 7 | 0 | 0 | 7 |
| 定年制正社員(期間の定めなし) | 2,385 | 3,422 | 1,067 | 6,874 |
| 契約社員・準社員・パートなど(契約期間あり、反復更新) | 790 | 2,157 | 867 | 3,814 |
| 派遣労働者 | 0 | 9 | 1 | 10 |
この調査結果からもわかるように、特例子会社では正社員だけでなく、契約社員やパートなど幅広い雇用形態が整備されています。
障害の種類(身体・知的・精神)に応じて多様な選択肢があり、フルタイムで安定して働きたい方から、短時間勤務で無理なく働きたい方まで、それぞれに合った働き方を選べるのが特徴です。
一般の会社との違いを整理
| 項目 | 特例子会社 | 一般の会社 |
|---|---|---|
| 設立目的 | 障害者雇用促進と定着支援 | 幅広い事業目的 |
| 法定雇用率算定 | 親会社と合算可能 | 自社のみで算定 |
| 支援体制 | 合理的配慮を実施しやすい体制(専門スタッフ配置など)が整えられている企業が多い | 合理的配慮は義務だが体制は多様 |
| 障害者の割合 | 従業員の20%以上が障害者 | 比率は低い |
| 福利厚生 | 通院休暇、短時間勤務、障害特性対応有 | 一般的な福利厚生 |
| 業務内容 | 障害特性に配慮した業務 | 一般的な業務 |
この比較からもわかるように、特例子会社は障害のある方が安心して働き続けられるよう、環境や支援体制を特に重視しているのが特徴です。
参考:野村総合研究所「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査 調査結果」
国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査結果について(平均給与)」
特例子会社と一般企業の障害者雇用枠との違い
| 項目 | 特例子会社 | 一般企業の障害者雇用枠 |
|---|---|---|
| 目的・設立背景 | 障害のある方の雇用を進め、長く働けるようにするために特化して設立 | 通常の会社に用意された障害のある方のための雇用枠 |
| 障害のある方の比率・仲間の多さ | 障害のある方の割合が高く、同じ立場の同僚や相談員が多い | 障害のある方は少数派で、周囲の多くは障害のない社員 |
| 支援・配慮の制度や設備 | バリアフリー、短時間勤務、通院休暇など配慮が充実 | 企業によって支援の仕組みや体制に差がある |
| サポート体制 | 専任の相談員やジョブコーチがいて相談しやすい | サポート体制は会社や職場によって異なる |
| 給与水準(2018年) | 年収は101~250万円が中心で低めの傾向 | 平均年収は約175万円(障害者雇用における平均賃金から計算) |
| 定着率・雇用の安定性 | 大企業グループの子会社が多く、比較的安定して働きやすい | 会社によって差があり、安定度はまちまち |
| メリット | 体制が整備されている企業が多い、安定した雇用、障害理解のある環境 | 職種や業務の幅が広い |
| デメリット | 給与やキャリアの幅に限界がある、仕事の種類が限られやすい | サポートが弱い場合があり、孤立感を持つケースもある |
特例子会社は、配慮やサポートが手厚く、安定した雇用環境が強みです。ただし、給与やキャリアの幅は限定的になりやすい傾向があります。
一般企業の障害者雇用枠は、障害のない社員と関わる機会が多く、配慮の伝え方や自己発信の練習になるほか、親会社に依存しないため職種や業務の幅が広い点がメリットです。一方で、支援体制や配慮の手厚さは会社によって差があります。
参考:厚生労働省「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果」
特例子会社はどんな人に向いている?

この章のポイント
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特例子会社に向いている人
障害特性に応じた配慮や支援を受けたい人/指導員やジョブコーチのサポートを受けたい人 -
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ポイント
特例子会社は自分のペースで働きたい方に向いている
専門スキルを活かして幅広く経験したい方、キャリア重視の方は、一般企業の障害者雇用枠も選択肢に
特例子会社は、障害のある方が安心して長く働けることを一番に考えられています。そのため、仕事に求めるものによって、向き不向きが分かれます。
特例子会社に向いている人の特徴
- 安定した環境で長く働きたい
- 障害特性に応じた配慮や支援を受けたい
- 指導員やジョブコーチのサポートを受けたい
- 同じような障害のある仲間と助け合いながら働きたい
特例子会社は「安心」と「安定」が魅力で、業務内容や勤務環境が障害特性に合わせて整えられているため、自分のペースでじっくり働きたい方に向いています。
一方で、業務内容が比較的定型化されている企業が多いため、専門スキルを活かして幅広い業務経験を積みたい場合や、昇給・昇進などキャリアアップを重視する場合は、一般企業の障害者雇用枠も選択肢の一つとして考えると良いでしょう。
特例子会社の1日の流れ

この章のポイント
- ● 障害特性に配慮した無理のない業務と、面談などのサポート体制が整っているのが特徴
特例子会社では、働く方が無理なく安心して過ごせるように、1日のスケジュールがあらかじめ整えられていることが多いです。ここでは、その一例を紹介します。
9:45|出社
体温や体調を記入し、今日の業務を確認します。
10:00|午前の仕事
与えられた作業に集中して取り組みます。
12:00|昼休み
過ごし方は自由。食事や休憩などでリフレッシュします。
13:00|午後の仕事
午前に続き、定型作業を中心に進めます。
14:00|面談
外部の支援者と一緒に、不安や悩みを相談できる時間。安心して働き続けるために大切な場です。
15:00|午後の仕事
作業を再開し、業務を進めます。
16:45|片づけ・退社
1日の業務を終え退社します。
このように、特例子会社では障害特性に配慮した無理のない業務と面談などによる支援体制が整っているのが大きな特徴です。
特例子会社求人の探し方

この章のポイント
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特例子会社の求人の探し方
ハローワーク/就労移行支援事業所/求人サイト・企業HP -
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ポイント
複数の方法を並行して活用/定期的にチェックして求人を見逃さない
特例子会社の求人を探す方法は、大きく分けて次の3つです。
ハローワークで探す
障害者専門窓口やハローワークインターネットサービスを利用して、特例子会社の求人を探すことができます。直接相談できる窓口があるためサポートを受けやすいです。
参考:厚生労働省「全国のハローワークの所在案内」
就労移行支援で探す
就労移行支援事業所のスタッフは、特例子会社や障害者雇用枠の求人に詳しく、利用者の適性や希望に応じた求人探しのサポートを行ってくれます。また、応募書類の書き方のサポートや面接練習などの支援も提供されるため応募前の不安を軽減することができます。
求人サイトや企業HPから探す
障害者向けの転職サイトやエージェントを使うと、特例子会社求人を効率よく探せます。応募書類や面接のサポートも充実しています。
また、特例子会社の企業HPの「採用情報」ページから最新求人を直接確認することも可能です。特に大手の特例子会社は、自社HPで定期的に求人を更新しています。
効率よく探すためのポイント
- 複数の方法を試す: 求人探しを効率よく行うには、ハローワーク、就労移行支援、求人サイトなど複数の方法を並行して利用することが重要です。
- こまめにチェックする: 求人情報は日々変わります。気になる求人を見逃さないように、定期的にチェックする習慣をつけましょう。
特例子会社求人の申し込みの流れ

この章のポイント
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申し込みの流れ
求人を探す → 書類準備 → 応募 → 面接 → 内定・契約
特例子会社の求人に応募する際は、いくつかのステップがあります。事前に流れを把握しておくことで、安心して選考に臨めます。
1. 求人情報の収集
まずはハローワーク、障害者向け転職サイト、就労移行支援事業所、企業のHPなどから求人を探します。複数のサービスを利用することで、より幅広く情報を集めることができます。
2. 応募書類の準備
履歴書や職務経歴書、障害についてまとめた書類を準備しましょう。不安なときは、転職エージェントや就労移行支援のスタッフにチェックしてもらうと安心です。
3. 応募手続き
ハローワークや求人サイトを通して応募する場合もあれば、企業HPから直接応募することもあります。応募方法はオンライン、郵送、窓口提出など求人によって異なります。
4. 面接・選考
面接前には、障害特性に応じた配慮(話す速度をゆっくりにする、筆談の利用、視覚資料の活用など)が可能か確認しておくことが重要です。面接では、自分の強みや職務適性を丁寧に伝えることが大切です。
5. 内定・雇用契約
内定が決まったら、提示された雇用条件をしっかり確認し、契約書に署名して雇用契約を結びます。
特例子会社について相談できる窓口

この章のポイント
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ハローワーク
障害者専用窓口で求人紹介や職業相談、企業見学・面談の手配もサポート -
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就労移行支援事業所
求人探しや応募書類添削、面接練習などの支援あり。就職後も職場定着支援が受けられる -
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地域障害者職業センター
職務分析・職業評価、ジョブコーチ支援、職場定着支援など幅広く対応。配慮内容や勤務調整の相談も可能
特例子会社について相談できる主な窓口は、以下の3つです。それぞれの役割を理解して活用しましょう。
ハローワーク
障害者専用の相談窓口があり、特例子会社の求人紹介や職業相談などを受けられます。希望や障害特性を伝えることで、求人紹介や企業見学・面談の手配なども支援してもらえます。
参考:厚生労働省「全国のハローワークの所在案内」
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業で働くための支援を行っています。利用者の希望や適性に合わせて求人探しのサポートを受けられるほか、応募書類の添削や面接練習など具体的な就職活動支援も充実しています。
就職後も、職場定着支援として本人や企業をフォローしてもらえるなど、長く働き続けるための支援体制があるのも特徴です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害のある方の就職や職場定着を支援する公的機関です。職業リハビリテーションを専門に行っており、就職前の準備から働き続けるためのサポートまで幅広く対応しています。
具体的には、以下のような支援を行っています。
- 働く上での強みや課題を整理する職務分析・職業評価
- 企業と連携して職場適応を支援するジョブコーチ支援
- 就職後のトラブルや体調不良などに対応する職場定着支援
また、職場での配慮内容や勤務時間の調整、休暇の取り方など、個別の状況に応じた具体的なアドバイスを受けることもできます。
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」
こんな時はどの窓口を使う?
就労に関する悩みや相談内容によって、利用できる窓口は異なります。
「職場での配慮を相談したい」「これから就職活動を始めたい」など、目的に合わせて相談先を選ぶとスムーズです。
| おすすめの窓口 | 相談内容 |
|---|---|
| ハローワーク | どんな特例子会社があるか、仕事の探し方を知りたい |
| 就労移行支援事業所 | 応募書類の書き方や面接が不安 |
| 地域障害者職業センター | 職場での働き方や配慮について相談したい、体調不良時の対応を知りたい |
特例子会社のメリット・デメリットを理解して、自分に合う働き方を選ぼう

特例子会社で働くことには、安心・安定した雇用環境や手厚い配慮・サポートといったメリットがあります。一方で、給与水準やキャリアの幅が限定的になりやすい点には注意が必要です。
特例子会社の特徴やメリット・デメリットを理解したうえで、自分の希望や働き方に合った職場を選ぶことが大切です。安定を重視するのか、キャリアや挑戦の幅を重視するのか、自分に合った働き方を考えましょう。
不安や疑問がある場合は、ハローワーク、就労移行支援事業所、地域障害者職業センターなどの相談窓口を活用して解消していくと安心です。

